出来なかったことを叱るのではなく、やらないことを叱る!

事例体験から学びたい!

出来なかったことを叱るのではなく、やらないことを叱る!

チーム成果をあげるために必要なノウハウ

先日、ある会社の幹部研修会で、“褒め叱り”がテーマの中心になった。

元をたどるとこの研修会は、チーム成果(業績革新・組織風土改革・新規テーマ推進等)をより生み出すためには“組織のリーダーとして何が大切か”といったテーマから企画が始まったものである。

経営者や人事部長から人事部長から

「現状では部下に任そうとはするものの、どうしても組織の長が手を出してしまう(そして上だけが忙しくなり、本来進めたい次の高いテーマの推進が疎(おろそ)かになっている)」

「最近の若手社員は、言われたことは進めるが自発的に取り組み、挑戦するという姿勢が希薄な側面がある。上司はそれを部下だけの問題にし『俺たちの頃は・・・』等と涼しい顔をしている。そもそも他責ではなく自らの育成力不足にも原因があることに本当の意味で気付いているのだろうか。各階層ともに共通して見られる、“失敗を恐れない”という全社をあげた風土創りが醸成されていない」

「外国人や異性社員、非定期雇用者(例えば、男性上司  女性部下等)とのコミュニケーションが拙(まず)く、戦力を充分に活かしきれていない」

等々多くの意見が挙がっていた。

変化の激しい今の時代に、経営上の課題をクリアする上で、戦略・設備投資・財務体質強化・システム構築等の解決、という側面はもちろんある。

が、原点である“人”の力をいかに引き出すか、といった方向性に、打ち合わせを重ねる中で研修の企画テーマが収斂(しゅうれん)していったのだ。

部下のやる気を引き出す褒め叱り

研修当日に向けた準備を進める中で、ある情景が脳裏に浮かんできた。

二十代の半ば頃、中華民国台湾に海外駐在していた時代のことである。私自身まだまだ若く経験も浅いため、現地スタッフとともに如何に成果を出していくか、悩んでいた。

自らも仕事に関しての経験や理解が不足している上に、文化や国民性も異なるスタッフと業務を遂行しなくてはならない。

如何に働きかけ、どの様な言葉掛けや行動をとれば効果的なのか、常に苦心していたのである。

この時こそ、最初に私が褒め叱りを強く意識した日々であったのは間違いがない。

そして、その時助けて頂いたのが同じく苦労をされていた他社の現地責任者の方々からの、体験からにじみ出た貴重なノウハウや言葉であった。

ある現地支店長は

「労力と能力を分けて褒め・叱ることで効果が上がった。誰しも頑張っていると本人は想っているような、手間暇掛けて取り組んだり煩わしいことを進めたその労力は褒める。一方でその人の可能性やノビシロは無限大にあるので、天狗にならないためにも能力は叱る」

また、別の駐在所長は

「長所を叱り、短所を褒めている」

と、一味違った面白い意見を頂戴した。

逆では?と想ったが、説明を聞くとそれも間違いなく一理(いちり)ある、と感じさせて頂いたものだ。

「人は長所については周りから称(たた)えられているので自信をもっている。しかしそれが逆に傲慢に繋がりやすい。だから多少厳しく言った方がいい。反面、短所に関しては自信を無くしている。なので従来の短所の変化の兆しや、変革度合いを良く見て褒めてあげることだ」

と、導いて頂いた。

正しい褒め方をマスターして部下を成長させる

この他にも、褒め叱りのテクニック的なものは様々あると想う。

ベーシックな例をあげると、怒ると叱るの違いを意識する、人前で叱らない(逆に本気さを表すために、その場で叱るという方もいる)、褒め叱りのバランスを大事にする、人を見て法を説く(部下の個性に合わせた働きかけをする)等々。

しかし、原点は小手先のテクニックやマニュアル的な対応ではなく、相手を想うこころにあると想う。

部下に対する自らの立ち位置(スタンス・捉え方)がずれているとどのようにしても効果は薄い。

冒頭の研修当日にも、前半部分で

「人は褒めた方がいいのでしょうか、逆に叱った方が成長するのでしょうか? 褒めれば思い上がるし、叱ればくさる・辞める。部下には、優しくした方がいいか厳しくした方がいいのかわからなくなってきている状態です」

という質問で出た。

私が即答し提案したのは、

「前提となる“温かく⇔冷たく”という縦軸こそがそもそも問われているのはないでしょうか? 」

というものである。

 

 ※温かく⇔冷たくの縦軸

 部下を伸ばす上手な叱り方

そして、最近私が取り組み、周りの方にも提案をして成果があがっているリーダーとしての褒め叱り、特に立ち位置のこともお伝えした。

それは、現在の能力ではなく、未来に繋がる意識を問うというリーダー自身のスタンスである。

言葉を変えれば、出来なかった理由を相手に問い叱るのではなく、やらない理由や姿勢こそを問い、叱ることを大切とするものである。

人は恐る恐るチャレンジしたのに、出来なかったことで叱責を受ければ、失敗を恐れ尻込みすることを学習してしまうだろう。

これまでを打破し挑戦しつつやってみたことは褒め、難しいと決め付けて躊躇し、やらないことは叱る。その様なリーダーでありたいと強く願い、参加者の方も含め皆で頷き誓いあった研修でのこころ熱くなるひとコマであった。

あなたご自身は何を感じ、何に取り組んでおられますか?

褒め叱りで忘れてはいけないキーワード

  • 「労力と能力を分けて褒め・叱る」
  • 「労力は褒める、能力は叱る」
  • 「“温かく⇔冷たく”という縦軸」
  • 「現在の能力ではなく、未来に繋がる意識を問う」
  • 「やってみたことを褒め、やらないことを叱る」
水野秀則
水野秀則

  1. あなたにとって効果的だと想う褒め叱りとはどの様なものですか? 部下に優しくした方がいいのか厳しくした方がいいのか? と、あなたが問われたら、どの様な答えを返しますか?

(2019年12月7日リライト)

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