人は生かされているという名言に結び付く、ある場所での体験
先日、生まれて初めて自衛隊の敷地に入った。ある企業の経営陣と共に、群馬県の相馬原(そうまはら)駐屯地の二つの史料館を訪れた時のことだ。
この企業では自衛隊の統制や規律正しさを社員育成に活かすために、経営陣自らがまず現地視察を行ったのである。
最初に入った桜武記念館では、日頃目に触れることの少ないものに数多くお目に掛かることができた。
自衛のための武器や装備品、また御巣鷹山での日航機事故や地下鉄サリン事件、最近の新潟中越地震等における災害事故救助の展示品を見て、自衛隊の様々な活動の理解を深めることができた。
次に訪れた友魂記念館(旧陸軍予備士官学校跡地に建立、同校卒業の1400名の戦没者を慰霊)では、戦争の悲惨さ、平和のありがたさを痛感した。死を覚悟して出陣していく若い軍人の手記や家族にあてた手紙は、見る者のこころを強く揺さぶらずにはおかない。
「父上様、母上様、これから行ってまいります。まさか先に旅立つとは想ってもおりませんでした。ただ一言、よくぞ死んだと言ってください・・・」等々。短い文章とはいえ、毛筆で書かれた美しい一字一句に凝縮された出陣を前にした若き戦士のその万感の想いが強烈に伝わってきたのだ。
日頃別世界と想っていた非日常の世界だけに、その場に足を踏み入れることで考えさせられることが非常に多くあった。
人は生かされている、その意味を再認識
わずか七十五年前、戦争という悲しい事実が、敗戦という形で終わりをつげた。人々は自分の想いや意志に関わらずそこに巻き込まれていった。日本では少し前までは、「水と安全はただ」と言われてきた。が、この二つが今の日本でもそうだと言える人がどれだけいるだろうか。
人は与えれた環境に馴染むという素晴らしい能力をもっている。しかし同時に、環境に慣れ親しむと、その有り難さや意味を忘れるようにできているのも人間の常のようだ。
自分にとって当たり前であった安全や平和というものは、実は当たり前のことではない。あくまでも今の一瞬だけが、守られており、生かされているだけなのだ。そして大切な点は、自分が自分を守っているのではなく、周りの人々(例えば、自衛隊のいざという時の活動)、ひいては国家というものに守られているように感じた現地視察であった。人は自分だけで生きているのではなく、人は生かされている、その意味を強く感じたのである。
経営をやっているのではなく、経営をやらせていただき感謝
今回の体験を通じて、企業における経営者という立場の人々も実に多くの人から支えられていることを実感する。お客様、取引先、金融機関、社員、家族、友人・知人、地域社会等々。社員がいるから経営者として活躍ができる。経営者一人だけでは、どのように頑張っても組織やチームを構成することはできない。支えてくれる社員がいるからこそ、一人ではできない大きな取り組みもできる。
このような想いから、経営に携わり組織を率いているのは当たり前のことではなく「有り難い(あることが難しい)」こととして私のこころに大きく映ったのであった。そして、そこから支えてくれている社員ひとりに、有り難いこと、『有難う』の言葉(感謝の想い)が改めて浮かんできた。
深く考えると「経営をやっているのではなく、経営をやらせていただいている」こうした大切なことが自分を包み込んでいったのである。
「人は生かされている」という感謝を持ち続ける経営者でいる
経営者として、業務を推進していく上で、日常「イライラ・ピリピリ」することは多いのかもしれない。が、そこには、「やって当然!」「経営者の自分はできているけど、部下や周りができていない!」という思い上がった経営者自らの気持ちがひそんでいることはないのであろうか。
今回、私にとっては別世界であった自衛隊訪問を通して、経営者のものの見方・考え方、こころのあり方を見つめ、自分のこころのおごりだけは決して持つまいという想いを強くした素晴らしい機会を得た。生かされている自分への実感と社員や周りへの感謝が、経営者を大きく育むということを胸に、さらなる精進を続けていきたい。
あなたご自身は何を感じられ、何を進めておられますか?
感謝の想いをもつ経営者のあなたへの言葉
- 「別世界へ足を踏み入れることは、考えさせられることが多い」
- 「環境に慣れ親しむと、その有り難さを忘れる」
- 「人は自分だけで生きているのではなく、人に生かされている」
- 「メンバーがいるからリーダーとして活躍ができる」
- 「経営をやっているのではなく、経営をやらせていただいている」
経営者のあなたへの問い掛け
- あなたにとっては当たり前だが、実は当たり前ではないことは何だと想われますか?
- あなたは誰にどのように支えられていると感じ、その感謝の想いをどのように伝えられておられますか?
(2019年3月17日リライト)