矢印を内に向ける人、外に向ける人
先日、ある経営者にこれまでの人生で大きな転機となられた瞬間のことを、お伺いする機会を得た。
この方はいつも熱く話しをされ、そのお人柄を慕いいつも多くの方が集っておられる。
日頃から私は、人を引き付けるその方の魅力の本質は何かということに関心を抱いていた。
この方は当時を振り返りながら、
「以前の私はただがむしゃらで、周りから本当に認められ信頼されていたかというと疑問があったのですよ。
それが、ある先輩経営者からの厳しくも暖かな言葉でものの見方・考え方が180度変わりましたね」
としみじみと話される。
「この先輩経営者からのアドバイスが、事業のことだけでなく家庭のことにも話が及んだ時、自分の妻のことで次のような言葉を投げ掛けられたのですよ。それは『色々あるだろうけど、そんな奥様に誰がしたのか!』という厳しいものだったのです。あまりに本質を突いたこの投げ掛けに返す言葉がなく、『好きで結婚したのでしょう。当時素敵だった奥さまがもし輝きを失っているのであれば、それはいったい誰の影響ですか!』と諭されるように言われ、ハッとするものが自分のこころに広がっていったのですよ。それまで、自分は朝早くから夜遅くまで一生懸命仕事をしているのに、家内はいったい何をやっているのか? とにかく自分はこれだけやっているのに、周りはそれに応えてくれないという想いが強かったのです。今から考えればとても恥ずかしいのですが、矢印が外(他人)にばかり向いていて、自分自身という内に向いていなかったのですね。」
(この経営者は、この出来事があってから、家族関係はもとより、職場での社員との関係、お客様や取引先との関係、広く対人関係が、がらっと変わっていったと言われる。)
経営者の人生は、「他人次第」でなく、本来「自分次第」
この一連の話を伺った私は、とてもショックを受けた。
色々なことがあっても自分のことを信じてついて来てくれる妻や子供。
来る日も来る日も目に見えないところで、自分に元気を与えてくれ、支えてくれている。
そんな家族がいるのに、ある意味「もっとこうして欲しい。もっとこうなって欲しい」と周り(他人)に向けての欲求(矢印を外に向ける行為)がこれまであまりにも多過ぎたのではないだろうか。
「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」といいつつも、自分のことを棚に上げ、周りに欲求を突きつけている自分の姿がそこにあった。ただただ自分の至らなさをわび、申し訳ない気持ちでいっぱいになったのである。
この経営者のお話を伺い、経営者の人生は他人次第・環境次第ではなく、本来"自分次第"であり、その生き様が経営や家庭を変えるという原点に立ち戻る機会をいただいたように想う。
他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる
こうして、"自分次第"という取り組みで、さらに見えてくるものがあった。
"他人次第・環境次第"で矢印を外に向けてやっている時は、マイナス感情が次々と生まれ出てくるということだ。
具体的には、指示したことがいつできあがるのかというイライラ感や、なぜやってくれないのかという失望感などである。
それが矢印を自分の内に向けると、自分にとっての実行テーマが自然に浮かび上がってくる。
この場合であれば、期限までに出来上がるようにアドバイスすることや、自分の想いや意図を再度伝えようとする努力である。
このテーマを実行に移すだけで、達成感や相手への信頼感といったプラスの感情を手にすることができる。
こうして、ものの見方・とらえ方のマイナスとプラスで、大きな格差が付くことを改めて実感したのである。
すべての源、責任は自分
いま、経営者として自分の周りに起こっていることは、全て経営者自身が引き起こした結果である。
経営者である自分が全ての源であり、責任は我にあり。その源が変われば、全てが変わっていくはずだ。
この視点に立てるかどうかが、人間関係、ひいては人生がより豊かなものになるか否かを決めるのだと想う。
この視点に常に立ち続けているのは成果を上げる経営者の方々に実に多いとしみじみ想う。
経営者は、グチ、泣き言、不平不満等々を表に出されない。
経営者も人間であるから、そのような感情が出てこないということは決してないはずだ。
しかし、他人や環境のせいにしたくなる自分の弱い気持ちをぐっとこらえて、自分に矢印を向けて「自分自身の至らないことは何だろうか」と問うのであろう。
そこで、経営者自身の行動に目が向き、磨きに磨き上げられた類いまれなる魅力にあふれる経営者が誕生するものと想う。
"自分次第"という、ものの見方・考え方が、経営人生を180度変える。プラス感情にあふれ、キラキラと輝き魅力あふれる経営者を生み出す第一歩は、自からがそのカギを持っている。 気づくか、気づかないか、矢印を内に向けるか、外に向けるか、その責任を引き受けるか、引き受けないかは経営者であるあなた次第である。
あなたご自身は何を感じられ、どのように進めておられますか?
経営人生を歩むあなたへの言葉
- 「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」
- 「人生は"自分次第"であり、その生き様が事業と家庭を変える」
- 「経営者にとって、自分が全ての源であり、責任は我にあり」
- 「経営人生の180度転換は、"自分次第"」
自分次第の経営者のあなたへの問い掛け
- あなたは、矢印を他人や環境という外に向けることが多いですか、自分自身という内に向けることが多いですか?
- あなたは自分次第で生きることで何を手にすることができると感じられますか?
(2019年3月9日リライト)