最期まで自分を動かし周りを動かせた大女優

事例体験から学びたい!

最期まで自分を動かし周りを動かせた大女優

女優業を笑顔で演じきった55歳の短い命

女優、田中好子さんが亡くなって早8年が経った。

キャンディーズの一員としてヒット曲を連発し、一躍トップアイドルになり、人気絶頂の中、当時では異例と言われた後楽園球場を5万5千人のファンで埋め尽くすファイナルコンサートを開催。

惜しまれながら’78年に解散、表舞台から姿を消した。

しかしその後、病床の弟さんの「テレビで活躍している姿をもう一度見たい」という声に押され女優として復帰。

「おしん」「黒い雨」「ちゅらさん」等映画やドラマで活躍し、存在感ある演技で世代を問わず人気が高かった。

けれども、その裏にあの天真爛漫な笑顔からは想像できない苦痛と苦悩がいくつもあったとは・・・。

’81年に当時19歳の実弟を骨肉腫で亡くした。

結婚翌年の’92年には自身の左胸にガンが見つかり、治療・再発を繰り返して以来闘病20年間。

病気のことをごく親しい人にしか告げず、女優業を笑顔で演じきった55歳の短い命であった。

一方女優業や自身の闘病だけでも大変な中、妹の夏目雅子さんを白血病のため27歳で亡くした夫や義母と共に、ガン患者へのかつら無償貸与・骨髄移植・エイズ問題等々、生涯医療の啓発活動に力を注いでいたのだ。

自分自信を強く突き動かしたものは何なのだろうか

痛みや苦しみ、不安が間断なしに襲ってくる中の、鬼気迫る演技や日常生活での人懐っこく明るい笑顔の背景には何が存在したのか。

役者として人を惹きつけ、魅了するには何を大事にされていたのか

そして、ご自身を強く突き動かすものは何であったのか──。

その生き様や仕事に懸ける想いに、私は無性に触れたい想いに駆られた。

晩年の作品では、社会のひずみや、そこから生まれる弱者を熱演した。

阪神大震災を描いた「ありがとう」、裁判員制度を題材としたNHKドラマ「てのひらのメモ」。

中でも、19歳の大学生の一人息子を交通事故で亡くした母を演じた「0からの風」。

追悼で上映会が行われていたが、実在の人物である鈴木共子さん(※1)のこころのひだを、迫真の演技で表現されている、としみじみ感じ入って観た。

飲酒運転かつ無免許、再犯であっても、業務上過失致死罪、最高刑でもわずか5年という事実を受け入れ切れない主人公の悔しさと虚しさ。

「息子の代わりを生きる」ため、母自らが同じ早稲田大学に入学・卒業する想いや喜び。

飲酒運転撲滅等社会の意識を変え、法改正へ向かって行動された鈴木さんを全身全霊かけて演じられていた。

深い想いに裏打ちされた行動に人と社会が動いていく様を、見事に表現されていたのである。

特に、雨の中亡くなった息子に語り泣き叫ぶシーン。

そして加害者と向かい合い自らの想いを語るシーン。

そのいずれもが、田中さん自身の魂の奥深い所から湧き上がってくる、命の叫び・生への叫びであるかのように感じ息をのんだ。

(※1 鈴木共子さんは「いのち」への強い想いを表現した「いのちのミュージアム」を東京都日野市に設立。代表理事を務めておられる。)

心に響いた最後の言葉

告別式。快晴だった天気が、参列者一同最後のお別れをした直後、嵐の様な雨と風が涙雨となって吹き荒れた。

が、出棺の直前に空はまた晴れ渡ってきたのである。誰も知りえない何かを予兆するような現象であった。

そこに、ある肉声テープが流された。

振り絞るような声であり、亡くなる直前のご本人のラストメッセージであったのだ。

「(東日本大震災で被災された方へのお見舞いがあり、人生を共にしたランちゃん・ミキちゃんをはじめ周りの人に自分は幸せだったことを伝えた後)映画にもっと出たかった。テレビでもっと演じたかった。もっともっと女優を続けたかった。 いつの日か、妹、夏目雅子のように、支えて下さった皆様に、社会に、少しでも恩返しができるように復活したいと思います

“いつかは死ぬ”のではなく、“いつ死んでもおかしくない”

死を遠い存在にしないことで、“生きる”がキラキラと輝くよと、スーちゃん(田中好子さん)の魂の叫びが、温かく私のこころの中にこだました瞬間であった。

今あるこの道を一所懸命に生きること

一生を懸けてやることは何か、それを一所に懸けるとすればそれは何であるのか。

“一所懸命”という言葉がこれほどまでに迫ってきたことはなかった。

その懸ける姿勢から、真の魂が生まれ、人の琴線に響く仕(志)事や事業が生まれてくるのではないだろうか。

それがスーちゃんには女優という志事であり、ある人物の人生を演じきるという営みだった様に強く想う。

志事を通じて、命の大切さ、生きることの意味を多くの人に問い掛けることが彼女のこころの叫びであり、強い願いであったのは間違いがない。

生きるとは何か、原点にあるものは何か、志事や事業を何のために行うのか、自分が真にやりたいことは何か、という問いを今一度深く見つめ、再確認する機会を与えてもらったように感じる。

あなたご自身は何を感じ、何に取り組んでおられますか?

自分を動かし周りを真に動かした田中好子さん

  • 「女優業を笑顔で演じきった55歳の短い命」
  • 「深い想いに裏打ちされた行動に人と社会が動く」
  • 「もっともっと女優を続けたかった」
  • 「死を遠い存在にしないことで、“生きる”がキラキラと輝いてくる」
  • 「“一所懸命”」
水野秀則
水野秀則

  1.  あなたのこころの底にある、“真の叫び”は何だと想われますか?
  2.  あなたは人を惹きつけ・魅了するには何が大事であり、ご自身が強く突き動かされるには何が必要だと感じておられますか?

(2020年1月7日リライト)

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