こんな世界があるのか!―――人生は理屈じゃない!
ツテもないまま扉を叩いたあの日
私が、まだ大学生の頃でした。
小学校から野球一筋(甲子園常連校大阪の上宮高校で春の選抜出場)に打ち込んできた私が、一転して政治家を志すようになったのです。
当時、田中角栄さんに強く惹かれていた私は、その腹心の元秘書である早坂茂三先生の事務所にお伺いしました。
まったく、ツテも何もない世界の扉を自ら叩いたのです。
人生の糧になる言葉の数々
事務所を訪れた一人の学生を、先生は満面の笑みで迎え入れて下さいました。
それに続くお話は、どれもが「こんな世界があるのか! こんな人がいるのか!」という驚きの連続でした。
「ワキは甘く、フトコロ深く、」
「大切なのは、戦略・戦術ではなく、人との接し方」
「食って、寝て、嫌なことは忘れろ(角栄三原則)」
「空は落ちてこない、山より大きな猪は出てこない、命までは取られない」
―単なる言葉ではなく、その存在感や究極の世界に触れ、こころに何とも言えないオーラをどっしりと感じたのです。
最後に、初対面の若造の私を何とエレベーターまで見送られるお姿を見て、私は「この人のためなら・・・どこまでも(両手両脚をとばしてもいい)」と強く想いました。
エレベーターのドアが閉まり、下に降りるまでどころか、駅についてもまだ感動の涙で顔がぐしゃぐしゃだったのです。
人としてどうありたいのかの追求
今考えてみると、この時の出来事が、いま当社で大切にしている人間力(人間性×実学×バイタリティー)の原点だったように思います。
先生は「人生は理屈じゃないんだ」「人間は感情の動物」ということを、腹にしっかりと落として下さった人生の師であり、恩人です。
結果的には、大学卒業と同時に、政治家ではなく家業の酒販店を引き継ぎ、急遽経営者になった私。
ですが、経営者になる前に人としての道を先生の事務所で修行させていただいたことが、今大きく花開いているように想います。
このご恩は一生決して忘れません。
あのこと―「人としてどうあるか」の追求―があったからこそ、今の経営者としての自分が間違いなくあるのです。
「やればできる!」─そのために、
- 想うこと
- 行動すること
- 人を感じること (シンプルであるが故に誰もが徹底しきれていない)
が大切であることを実感する素晴らしいご体験談であった。
(2020年3月24日リライト)