皆様は、“胆識(たんしき)”という言葉はご存知でしょうか?
今回、この“胆識”という言葉を大切に、事業に邁進されておられるタイガー警備保障株式会社(大阪府堺市)の吉川久美社長さまにインタビューをさせて頂きました。
胆識(たんしき)
決断力、実行力を有した見識のこと。 それは自身の信念に基づいて判断したときに是であったならば、如何なる困難があろうとも遂行し続ける強さである。 成功の是非は問わない。 失敗するとしても、やるべきだと判断したならば実行すること
1億2000万貸してあげてくれ!
人生と事業が大きく動く前の状況
私は9人兄弟の末っ子として奈良の田舎に生まれました。
今から想うと極度な貧乏生活の中で皆とぶつかり合い、助け合いながら、人間社会というものを学んだように思います。
事業を起こす時も、最初の一歩を大きく踏み出すことが出来たのは、社会との関わりを意識し、人とのご縁や人のこころとの力強い繋がりがあったからでした。
51歳で独立した(ご縁があり今でいうM&Aで危機にあった事業を引き継いだ)私の前職は、タクシー会社の専務職。
畑違いであったものの、警備業というものはこれからの社会に必ず役に立つと想い、トップに立つことにしたのです。
しかし、当然のことながら業界経験はもちろん、No.2の経験はありながらもNo.1経験が不足し、トップとしての社会的信用が足りなかったのは否めないことでした。
経営者・リーダーとして、こころにしみたあの言葉
事業の立ち上げ資金も、工面に苦心していたのです。
私自身、八方手を尽くし動き回っていました。その様な中、ある方の言葉とご尽力で大きくことが進展したのです。
融資を依頼していた信用組合に、ある方(社会人生活を踏み出した時の上司であり、その後独立した時にも引っ張って頂き、大変お世話になった社長)がわざわざ直談判に出向いて下さったのでした。
そして、目の前の理事長にこう言われたのです。
「吉川さんに、1億2000万円貸してあげてくれ! 」
──まさに驚きの瞬間でした。
人生・事業で何がシフト(転換)したか
この時、仕事というものは人間関係や信頼関係の上に成り立っているもの、そしてその信頼関係や絆を深めていくことこそが仕事であることを、実感として強く感じたのです。
自分自身が大きく変われた瞬間でもありました。
融資の話も、先方理事長が
「あなた(社長様)がそこまで言われるのなら」
と快諾をいただく形になったのです。
私には、その社長へ常に感謝の二文字があり、それが心の支えになってきました。
また、今後も少しでもご恩返しができる様にと、自分の大きな励みになっていることは間違いありません。
さらには、独立した時家内から「失敗しても、無一文になってもいいやん」と背中を押してもらったこと。
事業を引き継いだ時の職員17人の中に、弊社の現専務である井東がおり、私を信じこれまで右腕として支え続けてきてもらっていること。
──これ以外にも数え切れない多くの方のご厚情があったからこそ、今のタイガーであり、私が存在するのです。
- 人とのご縁・信用を蓄積する
- 感謝やご恩返しの力を常に意識する
- 井戸を掘った人間を忘れない
これらが大切であることを実感する素晴らしいご体験談であった。
二番手になってはいかん!
人生と事業が大きく動く前の状況
周りの方からのご支援や、幸運が重なり、51歳という創業するには比較的遅い年齢で今の警備業をスタートするに至った私。
振り返ってみると、単なる偶然の積み重ねではなく、必然であり、自分自身が追い求めた結果、経営者(リーダー)になることが出来た様に感じます。
結果として、私がリーダーとしての道へ進むに至ったのは、やはり幼少期の体験が大きく影響を与えているのではないでしょうか。
9人兄弟(男6人・女3人)の末っ子で、近所でも有名なくらいの貧しさ。
着る服は兄貴のお古ばかりで、いつもお腹をすかし、人のものを奪ってしまう気持ちが容易に理解できる程、貧困にあえいでいました。
後塵を拝すと、常に物にありつけない、泣き言を言わず自分で切り拓くしかない状況が長く続いたのです。
経営者・リーダーとして、こころにしみたあの言葉
この様な環境の中で私のこころに自然と、
「二番手になってはいかん!」
(誰かの後ろにいて依存するということは最もリスクが高い)
というスタンスが醸成されていきました。
リーダーとして、先頭に立ち、事業の舵を取る。
─そして、支えてくれるまわりのメンバーや家族、社会に幸せをもたらす立場。
そここそが自分の立つ場所ではないかと考えるようになったのです。
誰かに依存するのではなく、自らが柱になる生き方に自然と導かれました。
3.人生・事業で何がシフト(転換)したか
“苦労が人間を強くする”ということを、永年の人生を振り返ってしみじみと感じます。
我々経営者は誰からも何も言われない。
しかしふつふつと熱い想いがこころの底から湧き上がってくる──その原点は幼少期からの体験に育まれたのでしょう。
まさしく経営者としての、リーダーとしての器を、あの時の苦労が形作ってくれた様に想い、今はただただ感謝です。
「リーダーとしての器を開発する」──ために、
- 苦労に立ち向かう スキルよりスタンスに磨きをかける
- 幼少期の体験との関連を振り返る
これらが大切であることを実感する素晴らしいご体験談であった。
ええ(良い)人物と付き合わんと!
人生と事業が大きく動く前の状況
タクシー業界という異なる畑から、警備業界に飛び込んだ私。
同じ労働集約型の事業とはいえ異なる側面もたくさんあり、今後いかに会社の舵をとっていけばいいのか日夜一人で考えていました。
そんな時、業界を見つめるという意図で、警備業研究会という名のもと6人のメンバーが定期的に集まることになったのです。
同世代は私と他一人だけで、あとは皆上の年代層の方でしたが、何でもざっくばらんに話し合いました。
結果、この集まりは教えを頂いたり、意見を交換したり、という刺激し合える会として互いに創り込んでいくことが出来、私の生涯における財産になったのです。
経営者・リーダーとして、こころにしみたあの言葉
ある時、どの業界にも同業者の会はあり、何千社・何百社という会員がいて会合が存在する。
ただ、そういった会とは一線を画し、我々の会には別の良さがある。この会の良さとは何だろうか?と話し合ったことがありました。
「とにかく何でも言い合える」
「決算書の中身のことまで相談できる」
「たっぷり飲めて(※私だけ飲めない)、ゆっくり話せる」
「腹の探り合いがない」
そしてその直後に誰かの口から「原点はええ(良い)人物との出会い。そして真摯な付き合いを深めること!」という言葉が飛び、これが私のこころに強く響いたのです。
人生・事業で何がシフト(転換)したか
この会を通じて、仲間がいることの安心感──「自分だけじゃないんだ」
何でも話せる喜び─「相談出来てすっきり」
人の力を引き出す上での(労務問題の)悩み解決──「これをやればいいんだ」
という目には見えない心強さを当時とても感じていました。
今は、私以外は皆他界され寂しさはあります。
が、その分、自社の後継者と経営上の深い会話ができる様になりました。
後継者と何でも話せ、繋がったと思えた瞬間、それは特大の満塁ホームランを打った様な感覚でした!
また、これまで何かに迷った時や決断する時私は、胆識という言葉を大切にしてきました。
これからもこの気持ちを忘れず、仲間や同志がいることに日々感謝し、情報を共有しながらチームでの事業をより展開していきます。
自らが素敵な存在でいる 何でも話せる雰囲気をつくる
自らが先にさらけ出し、相手を受け入れていくこと
が大切であることを実感する素晴らしいご体験談であった。
(2019年11月12日リライト)※記事内の役職は当時のものです。