中小企業の後継者が陥りやすい「過小評価症」という事例
「ずいぶん燃費効率の悪い生き方をしていました!」
ある後継者から送られてきた電子メールの一行が、私の目に飛び込んできた。
それは、私が後継者に宛てたメールに対する返信の一文であった。
社会で『過食症』が話題になっているように、最近『過小(評価)症』があるのでは・・・。
何をどれだけやっても、自分のことを小さく扱ってしまう人がいるのではないだろうか・・・。
この後継者は私の投げ掛けに対して
自分も
『~かもしれない』
『~するのでは』
という言葉を必要以上に用いて、現実には起こる可能性の低い空想をふくらませ、あげくのはてには不安を自らがあおっていた。
言うなれば、
『マイナスの想像(空想)の種を蒔(ま)いて、やれないのではという不安の実(み)を収穫する』
というようなばかげた考え方を『努力』して繰り返していましたと、自分自身を冷静に見つめられたのである。
また、別の方からは同じ投げ掛けに、次のような返事をもらった。
これ、僕もよく言われるんですよね。うぬぼれ屋になったりせずに、常に向上心を持とうとすると、勝手に付いてくるオマケみたいな・・・。上を目指しているから、『卑屈』では無いのですけどね。
事業のブレーキとアクセルのコントロールを上手に!
「燃費効率の悪い生き方・・・」
「勝手についてくるオマケ」等々。
自分のこれまでの様々な体験に照らすことで私も「本当にそうだなぁ~」と、率直な気持ちが湧いてきた。
そして、人生を車に例えて、さらに私なりのイメージが浮かび上がってきたのである。
ブレーキ(不安・否定感)だけでは車(人生や事業承継)は前に進まない。
かといって、アクセル(安心・慢心(おごり))だけだとスピード違反になるし、何よりも事故を起こしてそこで終ってしまう。
ブレーキとアクセルがあるから、カーブ(つづら折れの人生の道)を正確に速くまわることができるんだんだ、と。
ブレーキとアクセルのバランス点検は、後継者・リーダーのの口ぐせ点検から
こうして私は以前にも増して、ブレーキ(不安)とアクセル(安心)のバランスの重要性を実感するようになっていた。
時おりハンドブレーキを引いたままで、必死に自分を前に進めようとしている、まことにバカげた姿が見えてきたこともある。
また逆に、有頂天になってアクセル(安心・慢心)を踏みすぎ、壁に激突しそうな自分が見えたこともあった。
人生や事業でのブレーキである自己不安感。
ブレーキがきき過ぎてしまった自己否定感。
人生や事業のアクセルである安心感。アクセルを踏み過ぎた慢心(おごり)。
ブレーキとアクセルのこの微妙なさじ加減を、置かれている状況や、今の自分の気持ちに応じて常に調整するようになったのもそういう自分の姿に気付いたからである。
また、「日常何げなく使っている言葉が、意外にも自分の行動をかたち作っている」と、感じたのもその頃であった。
そして、「最近よく使う口癖は何だろうか」とそこに注意が向くようになったものだ。
ブレーキの意味をもつ「~はずがない」や「~かもしれない」という口癖と、アクセルの役目である「~だろう」や「~ちがいない」という口癖のどれが多いかで、自分のこころのバランスがとれているかどうかを感ずるようにもなっていた。
「人生はバランスが大事だ」という想いが確信に近づいた貴重な瞬間であった。
「苦しい時こそ、人生の上り坂」チャレンジしている自分を承認しよう!
日常の志(仕)事の場面で、不安な気持ちがつのってくる事は実に多い。
特にこれまで経験のないことや、大きな目標に挑戦する社長や後継者はこの傾向が強いのかもしれない。
このように不安を感じた時や、何かの失敗で落ち込んだりした時、つまり「ブレーキがちょっときき過ぎているなぁ」と感じた時、私は次の言葉を思い出すようにしている。
「苦しい時こそ、人生の上り坂だ」
経営者・後継者にとって、何かにチャレンジしているからこそ苦しいのだ。苦しいということは、間違いなく必死にチャレンジしているからだ。
自分を承認しよう。
上り坂だから、チャレンジしているからこそ、不安は襲ってくる。
その不安をいったんは不安として素直に受けとめる。
それは攻めているから、向上心をもっているから、そして新たな突破口を創ろうとしているから起こる自然な感情なのだと自分のこころに言い聞かせる。
「不安は誰もがもつ感情なのだ」
「今の自分の気持ちでいいんだ!」
とブレーキを緩め、少しアクセルを踏み込むようにすると見える事業の世界が不思議と変わってくる。
曲がりくねったつづら折れの人生の道も、こころのアクセルとブレーキをバランスよく働かせることで、着実に駆け上ることができる!
あなたご自身は何を感じ、どのように進めておられますか?
事業の運転バランスを整える、後継者・リーダーのあなたへの言葉
- 「マイナスの想像(空想)の種を蒔(ま)いて、やれないのではという不安の実(み)を収穫する」
- 「過小(評価)症とは、向上心を持とうとすると、勝手に付いてくるオマケ」
- 「否定感⇔不安⇔安心⇔慢心(おごり)のバランス」
- 「「~はずがない」⇔「~かもしれない」⇔「~だろう」⇔「~ちがいない」のバランス」
- 「人生や事業はバランスが大事だ」 「苦しい時こそ、人生の上り坂だ!」
- あなたの人生や事業で、アクセル・ブレーキのバランスはいかがですか?
- あなたはリーダーとして不安な気持ちが湧き上がってきた時、どう対処されておられますか?
(2020年8月25日リライト)