自己実現とは?ー心のあり方、佐藤琢磨氏の事例
注目をしていたある選手が、大きな成果をあげられた瞬間があった。
自動車レースの最高峰と言われるF1(エフワン)レースに、日本人で当時3年ぶり、7人目のレーサーとして参戦された佐藤琢磨氏その人だ。
初挑戦となるシ-ズンでは、25歳という若さで2002年第17選日本グランプリに見事5位入賞を果たされた。2004年には、アメリカGPで日本人最高位タイの3位フィニッシュも飾られた。
私が注目していたのは、その若さでの数々の実績もさることながら、佐藤氏のこれまでの経歴にある。さらには、短期間に自己実現されている一人の人間としての心のあり方であり、ご本人が自然に話されるその言葉なのだ。
その経歴を振り返ると、19歳になるまで自動車、ましてやエンジン付の乗り物には全く縁がなく、学生時代、畑違いの自転車競技でチャンピオンになったという実績をもつに過ぎなかった。
今回はそのような佐藤氏がどのようにしてF1ドライバーになるという夢を実現されたのか、その足跡と共に彼の心のあり方や考えを探っていきたいと思う。(後の2017年に、世界三大カーレースの一つインディ500でアジア人初優勝を飾ったあの時の感動は、今でもわれわれの記憶に新しい)
『自己実現は自己信頼』の名言に学び、信じる力と行動力で跳ねのける
まず、自己実現や目標に対しての佐藤氏の考え方は徹底している。
それは、
『自分がやろうと決心したこと、目標と定めたことは、とにかくそれを目指してとことん頑張っていれば、何でも出来ないことはないと考えている』
という心のあり方や言葉に集約される。
それは、彼自身がまだ自動車の経験がない19歳の時に、ホンダ主催の鈴鹿レーシングスクールの約3倍の競争率を見事突破、7人の合格枠に入ったことからもうかがえる。
しかも驚くべきことに、開校以来、例をみない直談判で熱意を訴えて面接試験にまでこぎつけたことに注目すべきであろう。そのうえ、首席で卒業という快挙まで成し遂げたのである。
このことは、佐藤氏の次の言葉にも如実に現れている
『自分はやれるんだと信じて、周りの人のことも信じて、いっぱいサポートも受けて、そういう環境を自分自身で作っていけば何でも出来る』
彼は目標としたことは全て実現できるという『自己信頼』を常にもって生きている人といえよう。
それは単に実績をあげる中で自信がついたというレベルではなく、あくまでも自分の力や人間の可能性そのものを強く信じつづけてこられた結果であると感じたのである。
私の心の中に、自己実現は自己信頼という名言の様なものが去来した瞬間だ。
自己実現の方法とは? 未来から今を見つめる逆算から
また、角度を変えて彼の考え方を見ていくと、こんな言葉にも出会った。
『僕は自転車に乗っているときでも、いつも車を運転しているイメージを大切にしていました。』
このことばに込められている意味 ―― それは、あくまでも佐藤氏は、自動車のレーサーになることにこだわり続けていたということだ。
彼が自動車レースに初めて出会ったのは10歳の時にさかのぼる。お父様に連れられて行ったF1レースである。子供心に、その時とっさにレーサーになることを決めたという。
が、ここからが彼の真骨頂なのだが、ゴールとその達成の期限を明確に描き、その道筋をイメージしたのである。
『まず25、6歳にはF1に乗ろうという目標を持った時に、どの道がベストだろうかと、逆算したのです』
という言葉から、普通の考え方とは大きく違った一面をみることができる。
この『逆算人生』という考えに出会って、私が日頃触れ合う方々と共に大事にしてきた「From Future(フロムフューチャ、未来から今を見つめる)」という考えに一脈相通ずるものがあると共感を覚えた。それと共に、ゴールに向かう集中力と行動力といったものは、『逆算人生』というとり組みを通してより輝きを増すと佐藤氏の足跡を確かめる中で実感した。
名言『過去に囚われた人生ではなく、未来に彩られた人生』の実例に感謝
自分自身がやりたいこと、突き進むべき道がぼんやりしている人は案外多いのかもしれない。
そして生まれもった遺伝子や、自分をとり巻く環境に対して不平・不満を言うことが平気でまかり通っているようだ。
夢をつかむために極限までの集中力と行動力を発揮された佐藤氏の生き方は、そのようなとり組みとは全く正反対の全く次元の異なるものであったのだ。
164cmという小柄な体型。
若くして自動車レースに飛び込むだけの資金的な余裕がない、ごく普通のサラリーマン家庭に育った環境。
高校では自動車どころか自転車部すらなく、自ら自転車競技部を立ち上げるしかなかったという背景。早稲田大学在籍時に、自動車レースの実績を主に問われるレーシングスクールへ、実績が0での挑戦等々。
ともすればマイナス(阻害要因)に映りがちなこれらの数々の要素を全て自力で跳ねのけ、何よりも自己信頼することで前進してこられた。
そこにはF1選手になる(*決してなりたい・・・という願望だけではなく)という想いの力(メンタルパワー)があったはずである。
『過去に囚われた人生ではなく、未来に彩られた人生』『未来を自ら切り開く』
このことを改めて確認できたことを私は佐藤氏に感謝したい。
あなたご自身は何を感じられ、どのように進めておられますか?
自己実現に挑むリーダーのあなたへの言葉
- 「強く想えば何でも出来ないことはない」
- 「自分はやれるんだ!(自己信頼)」
- 「自分の力や人間の可能性そのものを強く信じつづける」
- 「逆算人生」
- 「From Future(フロムフューチャ)」
- 「過去にとらわれる人生ではなく、未来を切り開く人生」
自己実現欲求が深まる、リーダーのあなたへの問い掛け
- あなたが描かれる「人生のゴール」はどういったものですか?
- あなたはどのようにして、遺伝子や環境に左右されない人生を切り開いておられますか?
(2022年2月1日リライト)