経営方針発表会で伝えた『頑張らない』
先日ある会社の経営方針発表会で、全社員の方々にお話しをさせていただく機会を頂戴した。
飾らずに我々の事務所で取り組んでいることを生きた事例としてありのままにご紹介した。
その中で、「『頑張る』という言葉は極力使わない様にしているのですよ」ということを取り上げた。
皆さんの最初の反応は、「はぁ~?」「えっ!」という声。
加えて、何とも言えない驚きの表情であった。
が、その後に話した「それをなぜ推進しているか」という説明で、「なるほど、なるほど」と理解を示していただいた。
さらに、発表会後の懇親会の席上では、賛同をしてくれる方々との深い意見交換をもつこともできた。
ある女性は
「うつ病をはじめとする精神的にまいっている人に対して、一番言ってはいけない言葉は何か知っている?」と、周りの人に質問をぶつけておられた。
「それが、今日発表会でも出ていた『頑張って!』という言葉なのよ」と、
これまでの経験を元にその意味を力説をされていた。
「『自分としては精一杯頑張っているのに、まだあなたは頑張れと言うの?』という感情がわいて、追い詰められてしまうから避けた方がいいのよ」と彼女。
「頑張る」ことを良しとする風潮がある日本であるだけに、その逆の「頑張らない」ことを試みることは最初は確かに勇気とエネルギーがいることかもしれない。
その想いに理解を示され、少なからず実行している方も増えつつあることを実感した瞬間であった。
柳のしなやかな強さを発揮するリーダー
実はかくいう私が30代の時に大病をして退院する日、自分に誓ったことの一つがこの「頑張らない」という言葉であった。
そして、どうしても頑張ってしまうクソ真面目な面が残る自分をあらかじめ想定し、どうせ頑張ってしまうのであれば、ここはひとつ「頑張らないことを頑張ってみよう」という風に決めたのである。
松の力強さより、柳のしなやかな強さを大切に生きて行こうと決意した当時のことを昨日のことのように思い出す。
誰しも20代、30代の前半までは体力もある。
無理がある意味できく世代なのかもしれない。
が、「無理は決して続かない」。
そのことを大病を通じて悟った貴重な体験であった。
そのことが、頑張るという言葉を意識して使わないという原点になっているのは間違いがないところである。
頑張るリーダーでいいのか
それ以降、頑張るという言葉に関しては人一倍関心をもつようになった。そして、いくつかの貴重な発見もあった。
頑張るの語源は、「我を張る」から来ていること。
そこから転じて「努力を続ける」という意味になった点。
だから何か肩をいからせイヤイヤ無理をしてやるイメージが拭えなかったことが、自分なりにストンと理解ができたものだ。
自分が遊びに行く時や楽しいことをする時に、人は頑張るという言葉は決して使わない。
また、「頑」のつく字を辞書で調べたこともあった。頑固・頑強・頑丈等々、固さをイメージさせる漢字が多いということだ。
さらに、「頑張る」という言葉を、英語や中国語と対比させてみた。
英語では、Do your best!(自分の最高で)別れ際の「じゃ~頑張ってね」と日本語では使う時には、Take it easy!(気楽にね)もしくは、Enjoy yourself!(楽しんでやってね)。
中国語では、油をさらに付け加えるという意味で、「加油(ジャーヨウ)」である。
このように外国の頑張るは、決して無理をするとか、固さを感じるもの、ましてや悲壮感のただようものはまったくないことに気付く。
むしろその逆で、明るさや楽しさがイメージでき、自分のこころ次第というニュアンスが強い。
張りを、切るリーダー
頑張らないということを掲げて、永い年月が経ったが、いま私が志事(仕事)や生活で取り組んでいるのは、「張り切る」ということだ。
好きだからやる、自分の力だけでやる(一人相撲)ではなく周りの力をかりてやる、明るく楽しくやる、無理をしないで最高の自分を発揮してやる、といった自分の現時点の感覚に最もあった日本語なのである。
ガンバリズム(頑張ることが成果を生み出すという発想)から走りに走り続けてきたことで、ピーンと張り詰めた緊張の糸を、いい意味で無理をしないで取り組む(言わば、張りを切る)勇気こそが大切だと想う。
そして、自分が一番輝く生き方で「ワクワク・ニコニコ・スイスイ」を合言葉に、生き様をしなやかに再設計してはいかがだろうか。
人間誰しも、気取らず自然体で肩の力を抜いて生きている時が一番パワーも発揮される。そして、ごくごく自然に継続ができるので成果が生まれるのは間違いのないことだから。
あなたご自身は何を感じられ、どのようなリーダーとして周りに働きかけますか?
- 「頑張らないことを頑張ってみよう」
- 「柳のしなやかな強さ」
- 「無理は決して続かない」
- 「張り切る」
- 「無理をしないで取り組む(言わば、張りを切る)」
- 「ワクワク・ニコニコ・スイスイ」
- 「気取らず自然体で肩の力を抜いて生きる」
- あなたのパワーが最高に発揮される時、振り返るとそれはどのような精神状態ですか?
- あなたはどのようにして、しなやかさを高めておられますか?
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(2020年5月21日リライト)