アスリートのメンタルトレーニング事例に学ぶ
日々目にする新聞やテレビ。
その中でも身近なスポーツの世界から、私たちは実は学ぶことが多い。
つい先日も、自転車競技で日本最速の男としての異名をもつ長塚智広選手から貴重な気付きを得た。
長塚選手はオリンピックでも、世界を相手に堂々の銀メダルを獲得した。
そんな彼も自転車競技を始めた高校生の時には、意を決めて入った部活動をその厳しさからわずか3日で退部してしまうという弱い面をもつ少年でもあった。
このような彼が、自転車競技の盛んなヨーロッパの選手も舌を巻くほどに、短距離でのダッシュ力を身に付け超一流に育っていったのである。ここに彼の特長を如実に現す一つのエピソードがある。
それは、折りしも4年前の同じオリンピックの舞台でのことである。
弱冠二十一歳であった彼は、メダルを期待されながらも5位という不本意な結果に終わった。
そこから彼は、自分の力を最大限に引き出すために、自分の弱さにさらに直面し立ち向かっていった。
具体的には、悔しい想いをした自分が負けるオリンピックでの実況中継ビデオを、朝の目覚し替わりに毎朝来る日も来る日も見たという。(それまでは気分に左右され身が入らない状態で臨んだ練習が多かったり、早朝練習には寝過すこともあったと言う)
悔しさを一過性のものにせず、「やる気スイッチ」でこころに火をつける
長塚選手は、負けたという悔しさを一過性のものとはしなかったのである。
ある意味触れたくないその時の瞬間に、毎日自分の意志であえて向き合い、強烈なやる気を奮い立たせる原動力にしたのである。
このことが、彼にとっては効果的であった。
選手としての高い意識を植え付け、「オリンピックでメダルを取る、世界最速の男になる」という明確な目標に4年間―1460日間という長い期間挑み続けることに導いたに違いない。(もちろん人には個性があり、何が効果的かは個人差があるように想う)
この長塚選手のエピソードに出会い、自らが自然と奮い立ち目標に全力で立ち向かえるには、日々何があれば効果的なのか(弱気の虫を退治する強気の虫は何か)を見つめる機会につながった。
言うなれば、自分にとっての「やる気スイッチ(やる気に火がつくボタン)」が何であり、それは何によってスイッチオンになるのかを、さらに見極めたい衝動に駆られたのだ。
メンタルトレーニングを仕事に活かすコツ
手始めに、改めてよく自分自身を見つめてみた(わかっているようで案外一番気付いていないことが多いのが自分自身ではないだろうか)。
やる気が身体からみなぎり、目標に向け意識高く取り組んでいる時はどういった状態か?
逆に、やろうやろうと思いながら空回りをしていて前進が見られない時はどうか?
また、何があれば沈んだ気持ちを切り替え、自分のこころに火を燃やすことができるのか?
そこで私なりの出てきた一つの答えは、仕事で「感情」をもっと活用するということだ。
頭や理屈で「これをやるべき・やるのだ」と理解していても、案外自分の力を仕事で最大限に引き出すことは難しいのではという結論である。
むしろ、長塚選手の様に悔しい気持ちをストレートに再体験したり、メンタルトレーニングにある様なうまくいった時や嬉しかった瞬間を思い出すことによって、自然と力が仕事でもわきあがってくるのかもしれない。
そのような中で、以前から大切にしていた「実感なくして(真の)実行なし」という言葉が蘇ってきた。
メンタル面での真の強さを持つリーダーは、自らの弱さを知り抜き行動した人
リーダーは誰しも、気分が乗り好調な時ばかりではない。
失敗した時や、うまくいかなかった時、いかにそのことに対処し、リーダーとしての自分を切り替えていけるか。このことが大切であるように想う。
これまでも取り組んでいたことではあるが、さらに徹底する貴重なきっかけを得たように想う。
1.元気のでる音楽・自分のテーマ音楽を毎朝聴く
2.感動した場面・瞬間を書き留めた手帳を見る
3.自分が目標達成した時のイメージ(特に感情)を味わう
4.周りとコミュニケーションをする(特に、目標・夢を語る)
5.支えてくれている人への感謝の感情を表現する
今回の出来事を通じて、人間である以上一流選手と言えど普通の人と同じように弱い面をもつことを改めて実感した。
しかし、ただ三流選手と決定的に違うのは、その弱さを自分自身が十二分に認め、そこに対して明確な歯止め策を設けていることである。
真の強さを持つリーダーは、自らの弱さを知り抜き行動した人、この想いをさらに深める素晴らしい気付きをいただいたことに感謝したい。
あなたご自身は何を感じられ、何を進めておられますか?
メンタルに強い次世代リーダーのあなたへの言葉
- 「負けたという悔しさを一過性のものとはしない」
- 「弱気の虫を退治する強気の虫は何か」
- 「やる気スイッチでこころに火をつける」
- 「実感なくして(真の)実行なし」
- 「弱さを十二分に認め、明確な歯止め策を設ける」
- 「真の強さを持つリーダーは、自らの弱さを知り抜き行動した人」
- あなたは、スポーツ選手からこれまで何を一番学ばれましたか?
- あなたはどのようにして、自分の弱さに歯止めを掛けたり、好調を維持しようとされておられますか?(自分の「やる気スイッチ」は何であり、オンにするには何が必要でしょうか?)
(2021年3月2日リライト)