1.初任給で両親にプレゼントをしようと思うも大失敗
春4月、各社に伺うと、新入社員の初々しい姿を目にすることが多い。その時、いつも自分自身の新入社員の頃を思い出し、こころ洗われる気持ちになる。
当時のことで脳裏に浮かぶのは、社会人生活を始めたばかりの頃の私事だがある大失敗のことだ。
入社式で経営者から実体験に基づく話を伺った。ここでの締めくくりの言葉が、その時の私のこころにとても響いたのである。「この25日にいただく初任給で、これまでの感謝の気持を込めてご両親に何かプレゼントしてはどうか」と。私はそれに応えて、「一生に一回の記念すべき給与だから、経営者の方がされた様に自分も必ずプレゼントをします」とこころの中で誓った。
ところが、給料日の25日過ぎには上司先輩方の新入社員に対する「お客様(丁寧な)扱い」も徐々に影を潜め(笑)、戦力の一員として慣れないながらも現場業務を担当することになった。学生時代とはまったく違う、目の回る様なスピードを求められる日々に加えて、慣れない業務と取り組み、その緊張のあまり時間の余裕と共にこころの余裕さえも無くしていた。
「いただいた給与で両親に、プレゼントを買わなきゃ!いいものを買わなきゃ!」と思えば思うほど、記念となるプレゼントの品がなかなか決められず、いたづらに時だけが過ぎていった。
そうこうしていて5月の下旬のこと、勤務中にある連絡が入った。父が心筋梗塞で倒れたのである。そして父はそのまま帰らぬ人となった。
2.プレゼントは渡せなかったが、手紙を渡すことができた
これまで手塩に掛けて育ててくれた父に、何も恩返しができなった自分。人生でたった一回限りの初任給──それが私にとっては父に感謝を伝えることができる最後のチャンスになるはずの給与であった。しかし「後悔は先には訪れない」という言葉どおり、その後給与をもらっても父にプレゼントを贈るチャンスは二度と訪れて来なかったのである。
ただせめてもの救いは、父にあてて一通の手紙をしたため、照れながらも渡していたことであった。
両親やお世話になった方々への深い感謝を感じることで、「生きている自分」から「生かされている自分」であることを再認識した瞬間でもあった。
3.初任給から始まるお金の使い道、失敗で学んだからこそ自己啓発の投資に充てる
こうした人生最初の給与の使い方でつまづいたこともあり、その後お金の使い方には色々な想いがあった。ある経営者からは、「収入の10%は本代をはじめ資格取得費用等の自己啓発のための投資に当てなさい」とアドバイスをいただいた。
学生時代には本をあまり読まなかった私が、本を通じて様々な優秀な経営者と触れ合い書籍の面白さを知りえたのはこの言葉のお陰だと今も感謝している。
4.経営者の個性をあぶり出す金遣い
日頃、我々は経営者として売り上げをあげ、利益を出すことに力を注ぐ。そしてそこで手にした資金をさらに再投資にまわしていく。お金の稼ぎ方、蓄え方はもちろん大切なことである。しかし、その使い方こそがわれわれ経営者に大きく問われているのではないだろうか。
事業において、お金は目的ではなくあくまでも手段である。事業で手にした資金をどこに投入していくのか? 人遣いで経営者の個性が浮き彫りになるのと同じように、金遣いがその経営者の個性をあぶり出しているのではと感ずる。
一つの事例として、苦労を共にした社員やその家族、お世話になったお客様、取引業者の方々、盛り立ててくれた人々全てをご招待し、創業以来の日頃の感謝の意を込めて東京ディズニーランドを貸し切り、共に人生最高のファンタジーワールド(夢の世界)を楽しむ、という壮大なビジョンを描かれた超成長企業の経営者もいらっしゃる。
経営者としての今のあなたの金遣いは、間違いなく5年後のあなたの人生を決める。そして、会社の事業資金の使い道が、5年後のあなたの会社の存続・発展を決するものだといっても決して過言ではないとつくづく想うのである。
あなたご自身は何を感じられ、何を進めておられますか?
5.経営者のあなたへのお金の使い道を考える言葉
- 「初任給で、これまでの感謝の意を込めてご両親に何かプレゼント」
- 「後悔は先には訪れない」
- 「深い感謝を感じることで、「生きている自分」から「生かされている自分」へ」
- 「収入の10%は自己啓発のための投資」
- 「お金の稼ぎ方、蓄え方、そして使い方が大切」
- 「事業(人生)においてお金は目的ではなくあくまでも手段」
6.経営者のあなたへの問い掛け
- あなたのお金の使い道は、どのような特徴があると想われていますか?
- 初任給やお金について、新入社員にどの様に語り掛けていますか?
(2019年3月23日リライト)