銀行の全額保護の神話が崩れた瞬間
今から約10年前、日本初のペイオフ(預金保護:銀行破綻時に元本1000万円とその金利等は保護される制度)が発動された。
中小企業向け融資と一般顧客の定期預金専門である日本振興銀行が、1804億円の債務超過に陥り、自力再建を断念して民事再生法の申請をしたのである。
猛暑残る日本列島に大きな衝撃が走ったこのニュースは、皆様もちろん周知のところであろう。
普通預金や決済機能がない特殊な銀行とはいえ、銀行の全額保護の神話が名実ともに崩れ去った瞬間だったのではないだろうか。
元本1000万円を超える預金者が全体の2.7%、計3423人。
“5年定期で1.9%、1年定期でも金利1.3%”等という高金利につられ、過信して数千万円を預金していた経営者や資産家もいた。
「まさか」「やりきれない」という声をいくら上げても、1000万円を超える預金は返ってこないのだ。
ハイリスク・ハイリターン(リスクはあるが高いリターンがある)という側面にだけ目が行き、ハイリターン・ハイリスク(高いリターンは見込めるが、高いリスクもある)という視点が欠落していたのかもしれない。
改めて“自己責任”という言葉が、我々一人ひとりのこころと現実に、ズッシリとおろされたことを痛感した今回の出来事であった。
お金の危機管理(リスクマネジメント)
これらの報道を見聞きする中で、私のこころにはある言葉が広がってきた。 “リスク分散”である。
何があるのかわからないので、考えられる危険を分け、より安全を図るというものだ。
投資をする際にも、特定の商品にだけでなく、複数の商品に分散投資を行うほうがよいという教えがある。
相場格言でも言われる「卵は一つの籠(かご)に盛るな」という通りであり、投資だけでなくビジネスの場面でも大切な視点であることは間違いがないだろう。
お金との関わり方はバランスが取れてる?
ここで私が想う大切なことは、よく話題に出る投資や資産の分散ということより、隠れて見えづらく、また気が付きにくいが、“前提”となっているある見方・考え方だ。
それは「お金に対する関わり方」という“意識”が分散され、バランスが取れているか、という視点である。
お金との関わり方、というのはもちろん投資だけではない。
お金を稼ぐ、増やす、使うというそれぞれに向けた意識のバランスはどうか。
使うと稼ぐのバランス、貯めると運用する、寄付するという視点のバランス、(給料を)貰うと渡すのバランス、(資金を)借りると貸すのバランス等々・・・。
マネジメントセンスと同じ様に、マネーセンスも俯瞰(ふかん)的にトータルバランスを見る視点が必須だとしみじみと感じるのだ。
お金を使うと稼ぐの意識バランスが重要
ペイオフの発動という我々の未体験ゾーンに突入したニュースを受け、真のリスク分散とは何かを深く見つめる機会を得た。
投資を分散することには意識があっても、その前提となる、お金を増やすという視点とお金を使うという意識のバランスに無頓着な人もいる。
運用して増やしたお金をいかに自分自身や企業、社会のために使っていくのか、それによってどのような結果や効果がもたらされるのか等、多面的にお金を見つめていく視点が大切
だと感じる。
お金について、どの様な意識があって、どの様な意識が欠如しているのか、自らが気付き、そのアンバランスに歯止めを掛けていく想いを深めたいいきっかけとなった。
お金のリスク分散と共に、お金に対する意識の分散を!
あなたご自身は何を感じ、何に取り組んでおられますか?
お金のリスクマネジメントとは
- 「ハイリターン・ハイリスク(リターンは見込めるが、高いリスクがある)」
- 「リスク分散━━卵は一つの籠(かご)に盛るな」
- 「マネーセンスも俯瞰(ふかん)的にトータルバランスを見る視点が必須」
- 「お金のリスク分散と共に、お金に対する意識の分散を!」
水野からの問いかけ
- あなたは、お金に関してどの様な意識があって、どの様な意識が欠落していると感じておられますか? あなたは、お金に関して真のリスク分散は、どの様な取り組みだと感じておられますか?
(2019年12月24日 リライト)