
こんにちは。経営写コンサルタント®の水野秀則です。皆さんは、相手の話を聞きながら、「その気持ちは分かるけれど、賛成はできない」と感じたことはありませんか。否定したいわけではない。でも、そのまま受け入れるわけにもいかない。経営者やリーダーには、そんな会話の場面があるのではないでしょうか。
社員からの提案、幹部からの相談、お客様からの要望。大切な相手だからこそ、きちんと聞きたいと思います。一方で、会社として守りたい約束や、ほかの人への影響も考えなければなりません。耳を傾けることと、判断すること。その両方を担う難しさを感じることがありますね。
経営者シン感覚プレセッションでは、同感と共感の違いについて、皆さんに問いかける場面がありました。言葉の意味を覚えるだけでなく、自分の最近のやり取りに置き換えて考えてみる。自分の言葉で、その違いを説明できるかを確かめてみる。そんな問いをご一緒に深めたいと思ったのです。
今回は、その問いを、リーダーが意見の違う相手の話を聞く場面へ広げてみます。賛成できなくても、相手が何を大切にし、何に困っているかを受け止めることはできる。その可能性を、日々の仕事の中で考えてみたいと思います。
「私もそう思う」と言えないとき、対話は続けられるか
自分と考えが近い人の話には、うなずきやすいものです。「私もそう思います」「そこは気になりますよね」。言葉が自然に出て、会話も進みます。同じ思いを確かめられることは心強く、お互いの距離が近づくきっかけにもなるでしょう。そのようなやり取りを大切にすること自体に、何の問題もありません。
けれども、自分とは違う意見が出たときはどうでしょうか。さっきまでは相手を見ていたのに、資料へ目を落とす。話の途中で、「それは難しいですね」と答える。口には出さなくても、頭の中では反論を組み立てている。聞いているつもりでも、自分の答えを準備する時間になっているかもしれません。
例えば、「新しい担当を引き受けるのは不安です」と言われたとします。こちらは成長を期待して任せようとしていますから、「やる前から弱気にならなくても」と感じることもあるでしょう。その瞬間に励まし始めると、相手が何を不安に思っているのかは、まだ分からないままになります。
仕事の内容が難しいのでしょうか。今の担当業務をどうするか決まっていないのでしょうか。困ったときに相談できる人がいないのでしょうか。同じ「不安です」という言葉でも、その中身は違います。気持ちを奮い立たせる言葉が必要な場面もあれば、役割や支援を具体的にする必要がある場面もあるのですね。
そこで、ひと呼吸置いて、「どのあたりに不安を感じていますか」と聞いてみます。この質問をしたからといって、担当を取りやめる約束にはなりません。任せたいという自分の考えを持ちながら、その人から見えている仕事の姿を知ることはできます。考えが違うときにも、会話を続ける入口はあるのです。
同感と共感を、自分の会話に置き換えてみる
ここでは、日常の対話を見直す手掛かりとして、同感を「私も同じように思うこと」、共感を「あなたにはそう感じられているのだと、相手の立場から理解しようとすること」と分けて考えてみます。言葉の使い方を一つに決めるためではなく、自分がどのように話を聞いているかを見るための整理です。
同感するときには、自分の経験や意見と重なる部分があります。「私も初めて担当したときは不安でした」と言えることもあるでしょう。それが相手の助けになる場合もあります。ただ、自分にも似た経験があると分かったところで、相手の話をすべて理解できたことにはなりません。
自分が不安だった理由は、知識が足りないことだった。相手が不安なのは、引き受けた仕事を誰にも相談できないことだった。似た言葉を使っていても、事情は違うかもしれません。「私もそうだった」で会話を終えず、「あなたの場合は、どんなところですか」と、その人の話へ戻ってみたいですね。
一方、共感を考えるときには、自分が同じ気持ちになることを条件にしなくてもよいと思います。自分なら楽しみにする仕事を、相手は重く感じている。その違いがあっても、相手の経験や置かれている状況を聞けば、なぜそう受け止めているのかが少しずつ見えてくることがあります。
自分と同じかどうかを確かめるだけでなく、相手にはどう見えているかを尋ねる。この違いを意識すると、「自分なら気にしない」で片づけていた話にも、もう少し耳を傾けられるのではないでしょうか。違いをなくさずに理解しようとすることが、対話を支える場合もあるのです。
共感するために、気持ちを言い当てなくてもよい
相手の気持ちを理解しようとすると、「本当は悔しいのですね」「認めてほしいのですね」と、こちらが先回りして名前をつけたくなることがあります。でも、それが合っているとは限りません。本人は困っているだけなのに、怒っていると受け取られたら、説明し直す負担が増えてしまいます。
分からないときには、分からないまま尋ねてよいのだと思います。「そのとき、どんなことが気になりましたか」「今、一番話しておきたいことは何ですか」。言葉がすぐに出てこなければ、少し待つ。相手の内側をこちらの解釈で埋めないことも、理解しようとする姿勢の一つではないでしょうか。
気持ち、起きたこと、希望する対応を分けて聞く
話を受け止めることが難しくなるのは、気持ちと、起きたことと、相手が求めている対応が、一緒に語られるときです。「こんなに大変なのですから、この仕事は別の部署に移してください」。この一言には、負担の実感も、仕事の状況も、変更の提案も含まれています。
こちらが仕事を移せないと考えていると、話全体に「それは無理です」と返したくなるかもしれません。すると、相手には、負担を感じていることまで否定されたように届く場合があります。逆に、気持ちに寄り添おうとして「そうですね」とだけ答えると、仕事を移すことに同意してもらえたと受け取られる可能性もあります。
そこで、まず、何が起きていて、どの部分を負担に感じているのかを聞きます。「今の担当を続けるうえで、特に重く感じるのはどの作業ですか」。そのうえで、「仕事を移すことが希望なのですね」と、求めている対応も確認します。一つずつ扱うことで、どこを理解し、何をこれから検討するのかを分けられます。
気持ちを聞いたことは、相手の説明をすべて事実と確定したことでもありません。例えば、「いつも私だけが急ぎの仕事を受けています」と言われたら、その人には負担が偏っているように見えていると受け止める。同時に、実際の分担や直近の依頼を確かめることも必要でしょう。話を聞くことと、状況を確認することは両立します。
「負担が偏っていると感じていることは分かりました。どの仕事が重なっているか、一緒に確認したいと思います」。そのように伝えると、今どこまで受け取っているかを示せます。気持ちを消そうとすることも、調べる前に誰かを悪者にすることもせず、次に何を確かめるかへ進めるのですね。
架空の職場で考える、提案に賛成できないときの会話
ここで、架空の会社の場面を考えてみましょう。新しい問い合わせ窓口の運用を来週から始める予定です。担当者から、「この日程で始めるのは反対です。開始を延ばしてもらえませんか」と相談がありました。経営者は、お客様へ案内も済ませているため、予定どおり始めたいと考えています。
「もう決まったことだから、何とかしてください」と答えれば、開始する方針は伝わります。しかし、その担当者が何を見て反対しているのかは分かりません。操作に慣れていないのか、担当人数に無理があるのか、未確定の回答をお客様へ伝えることが心配なのか。反対という結論だけでは、準備に必要な情報が抜けたままです。
経営者は、「予定どおり始めたいと考えています。そのうえで、今の準備でどこが心配なのか聞かせてください」と伝えます。相手の希望が必ず通ると期待させずに、話を聞く姿勢を示す言い方です。すると担当者は、通常の問い合わせには答えられるけれど、例外的な相談の確認先が決まっていない、と説明しました。
さらに話を聞くと、担当者が心配していたのは、間違った回答をした後に、一人でお客様への説明を引き受けることでした。ここで、「そんなことにはならないから安心して」と言い切るのは簡単です。けれども、確認先も対応方針も決まっていないのであれば、安心してほしいという言葉だけでは、心配の理由は残ります。
そこで経営者は、「開始そのものより、答えられない相談が来たときに、一人で対応を抱えることが心配なのですね。この理解で合っていますか」と確かめます。担当者が「それだけでなく、通常の仕事も同時に担当する点が気になります」と補足したら、その点も聞きます。最初の要約で、相手の話を閉じてしまわないことが大切です。
そのうえで、経営者は判断を伝えます。「開始日は予定どおりにします。例外の相談は私が引き受けることにし、確認先を明記します。通常業務との重なりは、開始前に担当表を見直します」。延期という希望は採用していませんが、聞いた懸念は、準備と役割の調整に反映しています。
もちろん、この対応だけで担当者が納得するとは限りません。ほかにも実施できない理由が出てくれば、日程も含めて判断し直す必要があるでしょう。この例で大切にしたいのは、反対を消すために聞くのではなく、反対の中にある懸念を理解し、その情報を判断に使うことです。結論を伝えた後も、何が残っているかを確かめられます。
受け止める、確かめる、判断を伝える

先ほどの会話を、日々の仕事で使いやすいように三つの動きに整理してみます。まず、相手の話を受け止める。次に、自分の理解を確かめる。そして、理由とともに判断を伝える。順番を機械的に守るための型ではありません。自分が飛ばしやすいところに気づくための手掛かりです。
一つ目の「受け止める」では、相手の言葉を途中で小さくしないことを意識します。「それくらいのこと」「みんな同じです」と返す前に、その人がどんな場面を話しているのかを聞く。「どんな点が気になりますか」と、説明できる入口をつくります。長い時間をかけることだけが、丁寧に聞くことではありません。
二つ目の「確かめる」では、聞き取ったことを短く返します。「変更が嫌なのではなく、準備が整わないままお客様に対応することが心配、という理解で合っていますか」。こちらが何を受け取ったかを示すことで、相手は、足りないところや違うところを伝えられます。「違います」と言われたら、理解を直すための情報が増えたということです。
三つ目の「判断を伝える」では、何を決め、何をまだ決めていないかを明らかにします。できること、できないこと、確認してから答えることを分ける。今答えられないなら、「担当の配置を確認し、明日の午後に返事をします」と、次の対応を伝えます。結論を出せない時間にも、相手が見通しを持てるようにするのです。
気持ちを理解しようとすることと、提案に賛成することを分けると、聞くことにも、判断することにも誠実でいられます。話を聞いたのだから何でも認めなければならない、とは考えなくてよい。その代わり、聞いて分かったことを、その後どう扱ったかは、丁寧に伝えたいと思います。
「でも」を急がず、理解したことを一度置く
「大変だったのですね。でも、やってもらわないと困ります」。この言い方では、最初の受け止めが、その後の指示の前置きに聞こえるかもしれません。「でも」という言葉を一切使わないようにするよりも、自分が結論を急いでいないかに目を向けたいですね。相手がまだ説明している途中なのに、話を切り替えていないでしょうか。
「引き継ぎがないまま対応することが負担だったのですね」と伝えたら、いったん相手の返事を待つ。理解が合っているかを確かめてから、「今後の担当について、私の考えも伝えてよいですか」と進める。短い間でも、理解を確かめる時間と、こちらの判断を説明する時間を分けてみると、会話の進め方が変わります。
共感の言葉が、かえって会話を閉じることもある
「分かります」「大変でしたね」は、相手に関心を向ける言葉になり得ます。ただ、その言葉を使っただけで、相手を理解したことにはなりません。話の内容にかかわらず、いつも同じ返事をしていたら、相手は、何が伝わったのか分からないかもしれません。言い方だけを整えても、聞く姿勢の代わりにはならないのですね。
例えば、相手が作業の重なりについて具体的に話しているのに、「気持ちは分かります」とだけ答え、仕事の調整には触れない。そのようなやり取りが続けば、「気持ちの問題として処理された」と感じることもあるでしょう。話の中に実際の業務上の問題があるなら、その問題に応じた確認や対応が必要です。
また、「私も若いころはね」と、自分の経験を長く話すことにも気をつけたいと思います。役に立つ経験を渡したいという思いは自然です。ただ、相手が話し始めたばかりのところで自分の物語が始まると、相談したかったことを最後まで言えなくなる場合があります。経験を話す前に、今、相手が何を求めているかを確かめてみます。
「まず整理するために聞いてほしいですか。それとも、対応を一緒に考えたいですか」。このように尋ねれば、会話の目的を合わせやすくなります。もちろん、相手もまだ分からない場合があります。そのときは、ひとまず話してもらいながら考えることもできます。相談の入口で、すぐに解決策を渡す役割に決めなくてもよいのです。
共感を、相手にこちらの方針を受け入れてもらうための手順にしてしまわないことも大切です。丁寧に聞いた結果、自分の方針に見落としが見つかることもあるでしょう。その可能性を閉じたままでは、質問も説得の準備になってしまいます。相手の話によって自分の考えが動く余地を残すことが、聞く側にも求められると思います。
一人の話を聞くことと、チーム全体への責任を両立する
経営者や幹部は、目の前の相手だけでなく、まだ話していない人への影響も考えます。一人の希望を受け入れると、ほかの人の負担が増えることもありますね。だからといって、一人の話を聞くことを避ける必要はありません。その人の困りごとを理解したうえで、全体の条件を照らし合わせることができます。
例えば、会議の時間を変えてほしいと相談されたとします。その理由を聞くことと、希望どおりの時間に変えることは別です。ほかの担当者の予定、お客様への対応、会議の目的を見ながら考える。その結果、時刻を変える以外に、必要な人だけが参加する、報告部分を別の形で共有するといった選択肢が見つかるかもしれません。
このとき、相談者の個人的な事情を、本人の意向を確かめずに全員へ説明しないようにしたいですね。理解するために話してもらった内容と、業務を調整するために共有する内容は、同じとは限りません。「調整に必要な範囲で、どこまで伝えてよいですか」と確認することも、話を受け止めた後の大切な対応です。
一方で、他者を傷つける発言や、守る必要のあるルールに反する行動があった場合には、その場で止める必要があります。相手に事情があることと、その行動を続けてよいことは別です。「何があったかは聞きます。ただ、その言い方はここで止めてください」と、行動への対応を明確にしながら、話を聞くこともできます。
いつでも十分な時間を取れるわけでもありません。移動の直前に相談を受けたら、時計を見ながら聞き続けるより、「今は五分なら聞けます。詳しくは今日の四時に時間を取りたいのですが、急いで判断が必要なことはありますか」と伝える。使える時間を正直に示し、緊急の用件を確かめ、約束した時間に戻ることも誠実さだと思います。
相手の反応より、自分がどう聞いたかを振り返る
丁寧に聞けば、相手がすぐに笑顔になり、すべて納得してくれる。そう期待すると、思うような反応がないときに、「あれだけ聞いたのに」と感じてしまうかもしれません。でも、希望がかなわなければ、残念な気持ちが残ることはあります。理解されたと感じることと、結論を歓迎できることは、必ずしも一緒ではないのですね。
また、相手の「分かりました」が、納得なのか、説明を聞いたという意味なのか、その一言だけでは判断できません。立場の違いから、それ以上話しにくいこともあるでしょう。「進めるうえで、まだ困りそうな点はありますか」と聞くなど、結論への賛成を求める以外の確かめ方を持っておきたいと思います。
会話を振り返るときには、相手をうまく納得させられたかだけでなく、自分の行動を見てみます。相手が気にしていた点を、一つ具体的に言えるだろうか。自分の理解を訂正してもらう場面はあっただろうか。できることとできないことを、曖昧にせず伝えただろうか。自分が次に変えられるところを探します。
そして、返事や確認の約束が残っていないかを確かめます。会話の最中に温かい言葉をかけても、その後の連絡がなければ、相手は話がどう扱われたか分かりません。「確認したところ、この部分は変えられます」「今回は変更できませんが、次の見直しではこの条件を検討します」。聞いた後の行動までが、一続きの対話なのだと思います。
私が経営写コンサルタント®としてご一緒に見つめたいのも、こうした日々の現在地です。聞いているつもりの自分と、実際にどんな返事をし、その後どう動いたか。その間に違いが見えたら、責める材料にするのではなく、次の会話で変えられる一つを見つけたいのです。リーダー自身も、対話の中で学び続けることができます。
次の会話で、賛否を決める前に一つ聞いてみる
皆さんに、最近、意見が合わなかった相手を一人思い浮かべていただきたいと思います。その人が何を主張したかは覚えていても、何を心配し、何を守りたかったのかは、十分に聞いていなかったかもしれません。こちらも忙しく、結論を急ぐ事情があったのでしょう。今から聞き直せる部分はないでしょうか。
「この前の話では、すぐに結論を返してしまいました。気になっていた点を、もう少し聞かせてもらえますか」。そのように会話を開き直すこともできます。前の判断を必ず変えるという約束ではありません。判断に至るまでに聞けていなかったことがあれば、そこを確かめ直す。その姿勢を示すことには意味があると思います。
次の会話では、まず一つ、「相手には、どう見えているのだろう」と自分に問いかけてみてください。そして、答えを想像だけで埋めず、本人に尋ねてみる。理解したことを短く返し、違えば直してもらう。そのうえで、自分の判断と、次にすることを伝える。特別な面談でなくても、日々の短いやり取りから試せます。
同じ意見であることだけを、よい関係の条件にしない。私は、そのことを大切にしたいと思います。違いがあっても、相手の言葉を最後まで聞ける。決める必要があることは決め、その理由を伝えられる。そして、聞いたことを行動に反映できる。そんな関係を、皆さんとご一緒に育てていきたいのです。

皆さんは、次に意見が違う相手と話すとき、どんな問いから始めますか。「私もそう思います」と言えないときにも、「あなたには、どのように見えていますか」と尋ねることはできますね。私自身も、分かったつもりにならず、相手の実感に耳を傾けるところから、日々の対話を深めてまいります。
