「いいかげん」ではなく「良い加減」――経営を続け、成果につなげる力の育て方

経営者に必要なノウハウ

「いいかげん」ではなく「良い加減」――経営を続け、成果につなげる力の育て方

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ふさぽ

後継者をホンマモンに育む、応援をしています。社長を19年経験してわかったこと。それは'トップ自らの人生'を豊かにすること…人との”ツナガリ”づくりを通して。その入り口として、口癖にこだわり、Xでは発信中。『口ぐせは生きグセ』人生観に裏うちされた、事業づくりがトクイ種目。 ホンマデッカァw

「良い加減」とは何か――経営者に求められる“ちょうどよさ”

「いいかげん」と「良い加減」は、似ているようでまったく違う

いいかげんにしておきなさい」と言われると、どこか投げやりな印象を受けます。一方で、良い加減ですねと言われると、相手や状況をよく見たうえでの、心地よい配慮を感じるものです。

言葉はほんの一字違いです。しかし、経営に置き換えると、その違いは決して小さくありません。

「いいかげん」とは、目的を見失い、責任から逃れることです。数字を見ない。現場の声を聴かない。決めるべきことを先延ばしにする。これは経営者としての“加減”ではなく、単なる放置になってしまいます。

対して「良い加減」とは、何もかもを全力で抱え込まず、本当に大切なものを見極める力です。お客様に約束すべき品質は守る。社員の努力にはきちんと向き合う。会社の未来に関わる数字からは目をそらさない。その一方で、枝葉の違いに振り回されすぎず、今は力を抜いてもよいところを見定める。

私は、それが経営者に必要なさじ加減だと感じています。

経営者は日々、多くの判断を迫られます。すべてに同じ重さを置いていては、心も時間も先に尽きてしまうでしょう。だからこそ、「これは譲れない」「これは今、完璧でなくてもよい」と、自らに問い続けることが大切になります。

良い加減とは、甘さではありません。限られた人生と経営資源を、より大切な目的へ集中させるための、成熟した選択なのです。

あなたの経営には今、力を入れるべきところと、少し力を抜いてもよいところが、どのように見えているでしょうか。

経営は、正しさだけでは前へ進まない

経営をしていると、「何が正しいのか」で立ち止まる場面があります。

制度としてはどうあるべきか。数字から見れば、どちらを選ぶべきか。一般論としては、何が正解とされているか。経営者は、いつもその問いと向き合っています。

もちろん、正しさを求めることは大切です。法令を守る。お客様との約束を守る。社員に対して誠実である。事業を続けるために、利益や資金をきちんと見る。ここを曖昧にしてはいけません。

ただし、正しさだけでは、組織も経営者自身も動けなくなることがあります。

たとえば、社員一人ひとりにまったく同じ対応をすれば、それが公平だとは限りません。それぞれの置かれた状況、力量、これまで積み重ねてきた努力を踏まえたうえで、あえて声のかけ方や任せ方を変える。その判断には、数字や規則だけでは測れない「人を見る目」が求められます。

また、十分な情報がそろうまで決めないことが、本当に正しいとも限りません。経営には、待てば待つほど機会を失う局面があります。迷いながらも、今ある情報で決断し、走りながら修正していく。その勇気もまた、経営者の大切な役割です。

私は、経営とは「正解を当てる仕事」ではなく、「より良い答えをつくり続ける仕事」ではないかと感じています。

だからこそ必要になるのが、良い加減です。原則を大切にしながら、目の前の現実にもきちんと向き合う。理想を掲げながら、今日できる一歩を選ぶ。感情に流されず、それでいて人の気持ちを置き去りにしない。

右か左か、白か黒かだけでは割り切れない経営の現場で、最後にものをいうのは、経営者自身のさじ加減なのかもしれません。

そのさじ加減は、一朝一夕で身につくものではありません。人と向き合い、判断し、ときには失敗もしながら、少しずつ磨かれていくものです。

あなたは今、「正しいかどうか」だけを基準にして、動けなくなっていることはないでしょうか。

「手抜きの連続が、続くコツ」という言霊が教えてくれたこと

完璧主義が、継続と組織の力を奪っていく

やるなら完璧にやりたい

経営者であれば、そう思うのは当然のことです。お客様にご迷惑をかけたくない。社員に中途半端な姿を見せたくない。せっかく始めるのだから、成果につながる形にしたい。その責任感や志の高さが、会社を支えている場面も数多くあります。

しかし、その完璧さへのこだわりが、知らず知らずのうちに前進を止めてしまうことがあります。

新しい取り組みを始めようとしても、「もう少し準備が整ってから」「全員が納得してから」「失敗しない方法が見つかってから」と考えているうちに、時間だけが過ぎていく。会議では立派な意見が交わされているのに、現場では何も変わらない。そんな光景を、私はこれまで何度も見てきました。

完璧を目指すこと自体が悪いわけではありません。問題は、完璧でなければ始めない、続けない、任せないという状態に陥ることです。

経営には、走りながら整えるべきことがあります。小さく試し、現場の反応を受け止め、必要なら修正する。その繰り返しの中でこそ、会社に合った仕組みや文化が育っていくのではないでしょうか。

また、経営者が何もかも完璧にやろうとすると、社員も息苦しくなります。「失敗してはいけない」「上司の期待どおりでなければならない」という空気が強くなれば、挑戦よりも無難さが選ばれるようになります。すると、組織は少しずつ、自ら考えて動く力を失っていきます。

トップが完璧を求めすぎると、現場は萎縮する。けれども、トップが「まずはやってみよう」「うまくいかなければ、次に直せばよい」と言えるようになると、組織には挑戦する余白が生まれます。

もちろん、品質や安全、信頼に関わる部分まで安易に緩めてよいということではありません。そこには、絶対に譲れない基準が必要です。ただ、その基準以外のすべてまでを完璧にしようとすれば、経営者も社員も疲弊してしまいます。

だからこそ大切なのは、「どこにこだわり、どこを手放すか」を見極めることです。

続けるために、あえて力を抜く。組織を育てるために、あえて任せる。前に進むために、あえて未完成のまま始める。

それは妥協ではありません。経営を長く続け、成果を積み重ねるための、意志ある良い加減なのです。

小異を捨てて大同につくという、経営者の決断

組織には、さまざまな意見があります。

営業には営業の見方があり、製造には製造の事情があります。ベテランにはこれまで積み上げてきた経験があり、若い社員には新しい感覚があります。立場が違えば、見えている景色も違って当然です。

だから、意見が分かれること自体は悪いことではありません。むしろ、何も意見が出ない組織のほうが心配です。誰もが考えることをやめ、ただ指示を待つだけになっているかもしれないからです。

ただし、意見の違いにこだわりすぎると、組織は前に進めなくなります。

「あの部署ばかり優先されている」「そのやり方では現場が困る」「自分たちの意見が反映されていない」。一つひとつの声に耳を傾けることは大切です。しかし、その違いをすべて解消しようとしていたら、いつまでも結論は出ません。

そこで経営者に求められるのが、「小異を捨てて大同につく」という決断です。

ここでいう小異とは、人の意見を軽んじることではありません。細かな方法論や優先順位の違いにとらわれすぎず、「私たちは何のためにこの会社を続けているのか」「お客様や地域に、どのような価値を届けたいのか」という大きな目的に立ち返ることです。

目的が共有されれば、方法が一つでなくても前に進めます。全員が百点満点で納得していなくても、「その目的のためなら、まずはやってみよう」と力を合わせることができるのです。

経営者は、ときに全員から好かれる判断をあきらめなければなりません。誰かにとっては不十分に見え、別の誰かには厳しく映ることもあるでしょう。それでも、会社全体の未来を見据え、今ここで決めなければならない場面があります。

そのときに必要なのは、細部まで完璧に整えることではありません。大切な目的を見失わず、違いを抱えながらも進む勇気です。

「手抜きの連続が、続くコツ」という言葉も、私はこの考え方と重なります。すべての違いを埋めようとしない。すべてを自分一人で抱え込まない。今、最も大切なことに力を注ぎ、それ以外は少し肩の力を抜く。

それができてこそ、組織は疲弊せず、長く前進を続けられるのではないでしょうか。

あなたの会社では今、細かな違いに意識が向きすぎて、大きな目的が見えにくくなっていることはないでしょうか。

成果は“がんばった量”ではなく、“続いた行動”から生まれる

小さく始め、止めずに回す仕組みをつくる

経営で本当に難しいのは、何かを始めることよりも、始めたことを続けることではないでしょうか。

経営計画を立てる。会議のやり方を変える。社員教育を始める。お客様への情報発信に取り組む。どれも最初の一歩には勢いがあります。しかし、日々の業務に追われ、予定外の問題が起こり、気がつけば「また今度」に戻ってしまう。これは、決して意志が弱いからではありません。

経営者も社員も、限られた時間と力のなかで仕事をしています。だからこそ、最初から大きく始めすぎないことが大切です。

たとえば、毎月一回、全社員を集めた立派な会議を開こうとしても、準備の負担が大きすぎれば長続きしません。それよりも、朝礼で三分間だけ今週の重点を共有する。月に一度、幹部と数字を見ながら現状を話す。お客様の声を一件でも共有する。小さな行動でも、続けば組織の習慣になります。

「これくらいでは意味がない」と思うほどの小さな一歩が、実は一番続きやすいのです。

私は、行動の大きさよりも、行動が会社の中で回り続けるかどうかを大切にしたいと考えています。立派な計画書があっても、現場で使われなければ意味がありません。反対に、最初は粗削りでも、続けながら改善される仕組みには、会社を変える力があります。

ここでも「手抜きの連続が、続くコツ」という言葉が生きてきます。

毎回、百点を目指さない。資料は完璧でなくてもよい。全員の理解が一度でそろわなくてもよい。まずは動かしてみる。そして、うまくいかなかったところだけを少しずつ直していく。

この「少しずつ」が、経営では案外大きな差になります。

経営者に求められるのは、社員を一時的に奮い立たせることだけではありません。無理なく行動が続き、成果が見え、次の意欲につながる流れをつくることです。

大きな改革を掲げる前に、まずは問いかけてみてください。

「これは、忙しい月でも続けられるだろうか」
「私が不在でも、現場で回るだろうか」
「少し不完全でも、今日から始められるだろうか」

その問いに「はい」と言える取り組みこそが、会社に根づき、やがて成果へと育っていくのだと思います。

前進を見失わないために、経営者が持つべき視点

取り組みを続けていると、ときどき不安になります。

「このやり方で本当に合っているのだろうか」
「思ったほど成果が出ていない」
「もっと効果的な方法があるのではないか」

経営者であれば、こうした迷いは誰にでもあるものです。むしろ、会社や社員、お客様のことを真剣に考えているからこそ、迷いが生まれるのだと思います。

ただ、その迷いが強くなりすぎると、せっかく始めた行動を途中で止めてしまいます。新しい仕組みを始めても、数回で手応えがないと別の方法へ移る。社員に方針を伝えても、すぐに変化が見えないと、また違う言葉を投げかける。これでは、現場も何を信じ、何を続ければよいのか分からなくなってしまいます。

だからこそ経営者には、目先の結果だけで前進を判断しない視点が必要です。

もちろん、数字は大切です。売上、利益、資金繰り、生産性。経営は結果を避けて通れません。しかし、数字だけを見ていると、まだ芽が出ていない大切な変化を見落とすことがあります。

たとえば、会議で社員から意見が出るようになった。部門間で声をかけ合う場面が増えた。これまで指示待ちだった社員が、自ら提案を持ってくるようになった。こうした変化は、すぐに決算書へ表れるわけではありません。しかし、組織が前へ進み始めた確かな兆しです。

私は、経営者には「結果」と同時に「変化の兆し」を見る目が必要だと感じています。

目的地を見失わないこと。そして、今どこに立っているのかを冷静に見つめること。この二つがそろって、初めて次の一歩を正しく選べます。

登山でも、頂上だけを見て足元を見なければ危険です。反対に、足元ばかりを見ていては、どこへ向かっているのか分からなくなります。経営も同じではないでしょうか。目指す未来を見据えながら、今日の一歩を確かめる。その繰り返しが、やがて大きな前進になります。

まだ足りない」と焦る前に、問いかけてみてください。

昨日と比べて、何が少し変わっただろうか。
先月と比べて、組織のどこに前向きな兆しがあるだろうか。
そして、この取り組みは、私たちが目指す大きな目的につながっているだろうか。

その問いを持ち続けることが、継続を単なる惰性にせず、成果へと育てる力になるのです。

経営者のさじ加減が、組織の空気と社員の行動を変える

トップの力みすぎが、現場を疲れさせていないか

経営者が力を入れることは、決して悪いことではありません。

会社をより良くしたい。社員に成長してほしい。お客様にもっと喜んでいただきたい。事業を次の世代へつなぎたい。そうした強い想いがあるからこそ、経営者は誰よりも早く考え、誰よりも多く動こうとされます。

私自身、これまで多くの経営者の方々とお会いしてきましたが、成長を願っていない方は一人もおられませんでした。

しかし、その熱量が強すぎるとき、知らず知らずのうちに現場を疲れさせてしまうことがあります。

「なぜ、もっと早くできないのか」
「そこまで言わなくても、分かるはずだ」
「この程度のことは、自分で考えてほしい」

トップにとっては当たり前の基準でも、社員にとっては高い壁になっている場合があります。経営者は、会社の未来を見ています。数字の変化も、業界の流れも、お客様からの期待も、日々肌で感じておられるでしょう。

一方、現場の社員は、目の前の業務を確実に進めながら、上司や仲間との関係にも気を配っています。同じ会社にいても、見えている景色も、抱えている重さも違うのです。

だからこそ、トップの「もっと良くしたい」という力みが、そのまま現場への圧力になっていないかを、ときどき振り返る必要があります。

経営者が常に急いでいれば、社員は急がされていると感じます。経営者が常に不満そうにしていれば、社員は失敗を恐れます。経営者がすべてを自分で抱え込めば、社員は考える機会を失ってしまいます。

これは、経営者に情熱があるからこそ起こりうることです。悪気があるわけではありません。むしろ、会社を大切に思うあまり、つい力が入りすぎるのです。

けれども、組織はトップ一人の力だけでは伸び続けません。社員が自分の役割に意味を見いだし、自ら考え、小さな挑戦を重ねられるようになってこそ、会社には持続する力が備わっていきます。

そのためには、経営者自身が少し肩の力を抜くことも必要です。

すべてをすぐに変えようとしない。すべてを自分の基準にそろえようとしない。社員の未熟さだけを見るのではなく、昨日より少しでも前へ進んだ努力にも目を向ける。

「まだ足りない」と思う前に、「何ができるようになっただろうか」と問いかける。その視点があるだけで、組織の空気は変わり始めます。

トップの良い加減は、単なる優しさではありません。現場が力を発揮し続けるための、経営上の大切な判断です。

あなたは今、会社を前へ進めようとするあまり、知らず知らずのうちに、現場の呼吸をせわしなくしてはいないでしょうか。

任せる・待つ・引き受ける――リーダーの“加減”が問われる場面

経営者の仕事には、「自分でやる」よりも難しい仕事があります。

それは、任せることです。

任せたほうがよいと頭では分かっていても、つい口を出してしまう。途中経過が気になり、細かな部分まで確認したくなる。思うようなスピードや出来栄えで進まなければ、「やはり自分でやったほうが早い」と感じることもあるでしょう。

私も、経営者の方々から、そうした本音を何度もお聴きしてきました。

確かに、目の前の仕事だけを見れば、経験のある経営者が自ら手を動かしたほうが早く、確実な場合もあります。しかし、それを繰り返していると、組織はいつまでもトップの背中を追うだけになります。社員は判断する機会を失い、幹部は育ちにくくなります。そして何より、経営者自身がいつまでも現場から離れられなくなってしまいます。

だからこそ、任せることは、単なる業務分担ではありません。人を育て、組織の未来をつくる経営判断なのです。

ただし、任せるとは、丸投げすることではありません。

目的や期待する結果を伝えず、「あとはよろしく」と手放すだけでは、相手も困ってしまいます。任せる側に必要なのは、何を大切にしてほしいのか、どこまでは自分で判断してよいのか、困ったときにはどう相談すればよいのかを、あらかじめ示すことです。

そのうえで、少し待つ。

ここに、リーダーの加減が問われます。

社員が考え、迷い、試しながら答えを出そうとしている途中で、すぐに正解を示してしまえば、成長の芽を摘んでしまうかもしれません。少々遠回りに見えても、本人が気づき、自分の言葉で答えを見つける時間を待つ。これは簡単なようで、なかなかできることではありません。

一方で、任せた結果として問題が起きたときには、経営者が引き受ける覚悟も必要です。

責任だけを部下に負わせるのではなく、「任せたのは自分だ」と受け止める。その姿勢があるからこそ、社員は安心して挑戦できます。失敗を責めるだけの組織では、人は無難な行動しか選ばなくなります。しかし、失敗から学び、次に生かす風土があれば、組織には自ら成長する力が生まれます。

任せる。待つ。そして、いざというときには引き受ける。

この三つのバランスこそ、経営者の良い加減ではないでしょうか。

すべてを自分で抱え込まない。だからといって、無関心に手放すわけでもない。相手を信じながら見守り、必要なときには支え、最後は責任を担う。

そんなリーダーの姿勢が、社員の挑戦を後押しし、組織に次の世代を育てていくのだと思います。

自分らしい「良い加減」を見つけることが、経営と人生を豊かにする

5Freeの視点で見直す、無理のない経営のあり方

良い加減」という言葉を考えるとき、私は経営のやり方だけでなく、経営者ご自身の人生全体にも目を向けたいと思います。

なぜなら、会社を支えているのは、経営者という一人の人間だからです。

売上や利益が伸びていても、経営者が心身ともに疲れ切っていたら、果たしてそれを豊かな経営と呼べるでしょうか。社員から信頼され、お客様にも恵まれていても、家族と過ごす時間が失われ、いつも心に余裕がないとすれば、どこかに無理がたまっているのかもしれません。

私は、人生の豊かさを「5Free」という五つの視点で捉えています。

健康、こころ、お金、時間、人間関係。

この五つがすべて完璧に満たされる日など、現実にはなかなかないでしょう。経営をしていれば、資金繰りに神経を使う時期もあります。事業承継や人材の問題で、眠れない夜もあるかもしれません。大きな仕事に挑むため、家族との時間を一時的に削らざるを得ないこともあります。

だからこそ大切なのは、「すべてを同時に百点にする」ことではありません。

今、自分はどこに力を入れているのか。
そのために、どこが少し苦しくなっているのか。
そして、その苦しさは一時的なものなのか、それとも見過ごしてはいけない兆しなのか。

このことを、ときどき立ち止まって見つめることです。

たとえば、体調を後回しにして働き続けていないでしょうか。心配ごとを誰にも話せず、一人で抱え込んではいないでしょうか。数字への不安を、気合いや精神論で覆い隠してはいないでしょうか。時間に追われるあまり、社員や家族の顔をゆっくり見る余裕を失ってはいないでしょうか。

経営者は、つい「自分が頑張らなければ」と考えます。その責任感は尊いものです。しかし、ずっと力を入れ続けることが、必ずしも会社のためになるとは限りません。

経営者が疲弊すれば、判断は狭くなります。こころに余裕がなくなれば、人の言葉を受け止めにくくなります。時間に追われれば、目先の問題への対応ばかりになり、会社の未来を考える時間が失われていきます。

反対に、経営者が自らの健康を整え、こころに少しの余白を持ち、数字と向き合い、信頼できる人との関係を育めているとき、経営には落ち着きと深みが生まれます。

これこそが、「良い加減」の土台になるのではないでしょうか。

無理をしないとは、甘えることではありません。大切なものを犠牲にし続けないための、意志ある選択です。

今月は仕事に力を入れる。その代わり、来月は家族との時間を意識してつくる。今は新しい挑戦に集中する。その分、手放せる仕事は周囲に任せる。資金面に課題があるなら、見栄を張らずに数字と向き合い、早めに相談する。

そんな一つひとつの調整が、経営を長く続ける力になります。

経営は短距離走ではありません。だからこそ、走り続けられる加減を、自分自身で見つけていく必要があります。

あなたにとって今、最も整え直したい「Free」は何でしょうか。

その問いへの答えに、これからの経営をより豊かにするヒントが、きっと隠れているはずです。

あなたはどんな加減で、明日へ進みますか

経営には、これさえすれば必ずうまくいくという、たった一つの正解はありません。

会社の置かれている状況も、経営者が背負っている責任も、社員の成熟度も違うからです。成長のために、あえてアクセルを踏み込むべき時期もあります。一方で、無理に急がず、足元を整え、次の機会を待つほうがよい時期もあります。

だからこそ、経営者には自分自身の「さじ加減」が求められます。

大切なのは、周囲と比べて焦ることではありません。ほかの会社が新しいことを始めたからといって、自社も同じ速度で走る必要はありません。立派な経営手法を知ったからといって、すべてをすぐに取り入れなければならないわけでもありません。

まずは、自社にとって今、本当に大切なものは何かを見つめることです。

守るべきものは何か。
変えるべきものは何か。
今すぐ取り組むべきことは何か。
そして、今はあえて手放してもよいことは何か。

この問いに、毎日完璧な答えを出す必要はありません。しかし、問い続けることには大きな意味があります。問いを持つことで、経営者の判断に軸が生まれます。軸があれば、迷いながらでも一歩を選べます。そして、その一歩を続けることで、会社にも経営者自身にも、少しずつ確かな力が蓄えられていきます。

「手抜きの連続が、続くコツ」という言葉は、決して怠けることを勧めているのではないのでしょう。

大切なことを続けるために、すべてを抱え込みすぎない。
長く走り続けるために、ときには力を抜く。
組織を育てるために、自分一人で答えを出しすぎない。

そのような選択を重ねることこそが、「良い加減」なのだと私は感じます。

経営者の人生は、事業の数字だけでは測れません。社員がいきいきと働けているか。お客様との関係は深まっているか。家族や仲間との時間を大切にできているか。そして何より、自分自身が納得して、前を向いて歩めているか。

成果を急ぐあまり、続ける力を失わないことです。

少し不完全でも、今日できることから始める。
途中でつまずいても、また整え直して歩き出す。
周りの力を借りながら、自分らしい歩幅で進んでいく。

それが、経営を続け、成果につなげ、人生を豊かにしていく道ではないでしょうか。

さて、あなたは今、どんなことに力を入れすぎているでしょうか。

そして、明日から少しだけ「良い加減」に変えられることは、何でしょうか。

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