【別々の道】
人とのツナガリ、とだえる
「あるよねぇ」
Xでも、リアルの世界でも、しかも突然
「なんでぇ」
「もっとコレができたん"じゃないか"」「これだけやった"のに"」
と、メンタルのユレが出ることも
そんな時こそ原点に戻って
《未来に挑む、自分の想いは何か》
道を選択した双方が正解にする— ふさぽ@経営者 (@future_support) February 13, 2026
突然の退職は本当に“突然”なのか?
見えていなかったサインと、経営者の盲点
「突然、辞めたいと言われまして…」
これまで何度、この言葉を経営者の方からお聴きしてきたでしょうか。
そのたびに私は、少しだけ間を置いてこう問いかけます。
本当に“突然”だったのでしょうか。
もちろん、本人の口から退職の意思が出た瞬間は突然です。しかし、その決断に至るまでのプロセスは、ほとんどの場合、ゆっくりと、静かに進行しています。
- 表情の変化
- 発言のトーン
- 会議での発言回数
- 雑談の減少
- 挑戦意欲の低下
こうした“小さなサイン”は、必ずどこかに現れています。
しかし経営者は忙しい。
決めることに追われ、数字に追われ、資金繰りや未来戦略に意識が向く。
気づけば、「組織の空気」を感じる余白がなくなっている。
これは責める話ではありません。
むしろ、経営者という立場上、当然起きやすい構造なのです。
私自身も、タナベ経営時代から独立後に至るまで、多くの経営者と向き合ってきましたが、共通する盲点があります。
それは――
「自分は伝えているつもり」になっていること。
理念も伝えている。
感謝も伝えている。
期待も伝えている。
しかし、「伝えた」と「伝わった」は違う。
ここにズレが生まれます。
経営は部分最適ではなく全体最適です。
しかし、組織の中の一人ひとりは、人生という個別最適で動いている。
会社の未来と、その人の未来が、ほんの少しだけズレ始めたとき、その小さな歪みはやがて「突然の退職」という形で表面化するのです。
では、どうすればよいのか。
完璧に察知することは不可能です。
しかし、ひとつだけ確かなことがあります。
それは――
経営者が“現在地”を見つめる習慣を持っているかどうか。
会社の現在地だけでなく、
自分の現在地。
組織との関係性の現在地。
私は「経営写コンサルタント®」として、経営者の行動や空気を“写す”役割を担っています。
数字だけでは見えない現在地。
感情だけでは測れない現在地。
突然の退職は、組織の通信簿ではありません。
それは、経営者に向けた“問い”です。
《未来に挑む、自分の想いは何か》
この問いに立ち返れるかどうかで、その後の組織の未来は大きく変わります。
退職は終わりではありません。
そこから何を見つめるかが、リーダーの器を映し出します。
「これだけやったのに」という感情の正体
メンタルの揺れと向き合うリーダーの器
退職の申し出を受けた夜。
経営者のこころは、静かに揺れます。
「なんでだろう」
「もっとできたんじゃないか」
「これだけやったのに」
Xに投稿したあの言葉は、決してきれいごとではありません。
これは、私自身も含め、多くの経営者が抱く“本音”です。
経営者は強くあらねばならない。
ブレてはいけない。
弱音を吐いてはいけない。
そう思えば思うほど、この揺れは表に出せなくなります。
しかし私は、声を大にして申し上げたい。
揺れることは、弱さではありません。
むしろ、人を本気で育てようとした証です。
何も感じないのであれば、それは投資も期待もしていなかったということです。
「これだけやったのに」と思えるのは、本気だった証拠です。
ただし、ここに落とし穴があります。
その感情を、
相手への怒りに変えるのか
自己否定に変えるのか
原点への問いに変えるのか
ここで分岐が生まれます。
私はこれまで、数多くの経営者の分岐点に立ち会ってきました。
ある方は、「裏切られた」と言いました。
ある方は、「もう誰も信じない」と言いました。
またある方は、「自分の在り方を見直す」と言いました。
数年後、組織の姿はまったく違うものになっていました。
経営とは、感情と勘定のバランスです。
退職という出来事は、数字にも影響します。
人材育成コスト、採用コスト、業務停滞。
しかし、数字以上に影響するのが“空気”です。
トップが怒りで反応すれば、組織は萎縮します。
トップが自己否定に沈めば、組織は不安になります。
では、どうするのか。
私は、こう考えます。
まずは、揺れを認めること。
「自分は今、揺れている」
それを否定しない。
そして次に問うのです。
《この出来事は、私に何を問いかけているのか》
経営者は決める人です。
しかし、決める前に“問う人”でもあります。
問う力を失ったとき、リーダーは独裁になるか、迷走します。
揺れは、問いへの入り口です。
「これだけやったのに」という感情を、
「私は何を大切にしているのか」という問いに変えられたとき、
退職は、組織の危機ではなく、
経営者の成熟の機会へと変わります。
ここに、リーダーの器が映し出されるのです。
離脱は裏切りではない──“別々の道”という選択
人生観と事業観のズレが生む分岐点
人が辞めるとき。
それは必ずしも「不満」だけが理由ではありません。
給与でもない。
人間関係でもない。
仕事内容でもない。
本質は、もっと深いところにあります。
それは――
人生観と事業観のズレ。
経営者にとって、事業と人生は表裏一体です。
会社は、自分の想いそのものと言っても過言ではない。
しかし、社員一人ひとりにとってはどうでしょうか。
会社は人生の一部です。
すべてではない。
ここに、静かなズレが生まれます。
経営者は、「会社を良くする」ことが最優先。
社員は、「自分の人生を良くする」ことが最優先。
どちらも間違っていません。
だからこそ、分岐は起きるのです。
私はよく、経営者にこう申し上げます。
「退職は否定ではありません。選択です。」
離脱は裏切りではない。
その人が、自分の人生の舵を切っただけなのです。
もちろん、経営者としては痛い。
育てた人材であればなおさらです。
しかし、ここで忘れてはならないことがあります。
経営者自身も、過去に“別々の道”を選んできた存在であること。
私自身も、安定した上場企業を離れ、独立を選びました。
あのとき、「なんで辞めるんだ」と思った方もおられたでしょう。
しかし、あの選択があったからこそ、今の志事があります。
人は、それぞれのタイミングで、自分の人生の選択をします。
組織に残ることも選択。
離れることも選択。
問題は、その選択をどう意味づけるかです。
「裏切られた」と意味づければ、組織は閉じます。
「成長の通過点」と意味づければ、組織は成熟します。
双方が正解にする。
これは、きれいごとではありません。
成熟した組織文化の土台です。
去る人が「ここで学べてよかった」と言い、
残る人が「ここで働き続けたい」と思える。
それを創る責任は、トップにあります。
人生観と事業観のズレは、避けられません。
しかし、そのズレを“対立”にするか、“分岐”にするか。
ここに、リーダーの力量が問われるのです。
原点に戻る問い──《未来に挑む、自分の想いは何か》
経営者が立ち返るべき軸とは
人が辞める。
その出来事は、組織の問題である前に、経営者への問いです。
「あなたは、何を目指しているのか」
「なぜ、この事業を続けているのか」
「未来に挑む、自分の想いは何か」
退職という出来事は、痛みを伴います。
しかし、その痛みは、原点へ戻るためのサインでもあります。
経営者は日々、判断を迫られます。
売上をどう伸ばすか。
コストをどう抑えるか。
誰を昇格させるか。
どこに投資するか。
しかし、最も大切な判断は、意外と後回しになりがちです。
自分は、どんな人生を歩みたいのか。
私は「志事(しごと)」という言葉を大切にしています。
仕事は手段。
志事は生き様。
退職が続くと、経営者は焦ります。
「組織を引き締めなければ」
「評価制度を見直さなければ」
「管理を強化しなければ」
もちろん、制度の見直しは必要です。
しかし、それだけでは本質は変わりません。
組織は、トップの器以上にはなりません。
経営者の在り方が、文化になります。
経営者の言葉が、空気になります。
経営者の不安が、組織に伝播します。
だからこそ、まず問うべきは制度ではなく、自分です。
私は、36歳で大病を患い、下半身不随になりました。
あのとき、経営も何もありませんでした。
ただ、ひとつだけ残った問いがあります。
「自分は、何のために生かされているのか」
あの問いが、今の活動の原点です。
退職という出来事も、ある意味で“小さな原点回帰”です。
数字や人員配置の問題に矮小化するのではなく、
《未来に挑む、自分の想いは何か》
ここに立ち返れるかどうか。
この問いを持つ経営者は、ぶれません。
人が辞めても、理念は揺らがない。
感情は揺れても、軸は揺れない。
それが、組織に安心感を生みます。
原点に戻ることは、後退ではありません。
むしろ、最も力強い前進です。
双方が正解にする組織へ
辞める人も、残る人も活きる未来志向の経営
人が辞める。
その瞬間、経営者の頭に浮かぶのは「損失」です。
戦力ダウン。
採用コスト。
引き継ぎの混乱。
現場の不安。
しかし、未来志向の経営は、ここで思考を止めません。
退職は「穴」ではなく、「問い」です。
その問いは、こう語りかけています。
「この組織は、選ばれ続ける存在か」
「ここで働く意味を、言語化できているか」
辞める人を引き止めることが正解とは限りません。
残る人を安心させることだけが正解でもありません。
大切なのは、
去る人の人生も尊重し、残る人の未来も明確にすること。
そのために必要なのは、覚悟です。
「ここで挑みたい人と共に進む」
この姿勢が明確になると、組織は変わります。
不思議なもので、軸が定まると、人は戻ってきたりもします。
あるいは、価値観の合う人が自然と集まります。
経営はバランスです。
感情(かんじょう)と、勘定(かんじょう)。
理念と、数字。
優しさと、覚悟。
退職を恐れて迎合すれば、組織は緩みます。
強硬に締め付ければ、組織は硬直します。
双方が正解にする。
これは甘さではありません。
成熟です。
辞める人が、
「ここで学んだことを次で活かします」
と胸を張って言える組織。
残る人が、
「ここで挑み続けたい」
と前を向ける組織。
それを創るのは、制度ではなく、トップの在り方です。
退職問題は、経営者の器を映す鏡です。
そして同時に、未来を創る入口でもあります。
人とのツナガリがとだえる瞬間は、確かにあります。
しかし、そこで終わるのではありません。
別々の道を選んだ双方が、それぞれの場所で正解にしていく。
その覚悟を持つ経営者のもとにこそ、
本当に志を共にする仲間は集まります。
あなたは、今回の出来事を、どう正解にしますか。
