新人に何を教えるかより、先に聴くべきこと──新社会人が本当に不安に思っていること

経営者に必要なノウハウ

新人に何を教えるかより、先に聴くべきこと──新社会人が本当に不安に思っていること

2026年1月20日

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ふさぽ

後継者をホンマモンに育む、応援をしています。社長を19年経験してわかったこと。それは'トップ自らの人生'を豊かにすること…人との”ツナガリ”づくりを通して。その入り口として、口癖にこだわり、Xでは発信中。『口ぐせは生きグセ』人生観に裏うちされた、事業づくりがトクイ種目。 ホンマデッカァw

新社会人が最初に感じている不安とは何か

「仕事ができるか」より前にある、もっと根源的な不安

新社会人が職場に足を踏み入れたとき、
本人たちが一番最初に感じている不安は、実は「仕事ができるかどうか」ではありません。

私がこれまで、多くの若手社員や新社会人と向き合ってきて、
繰り返し耳にしてきたのは、こんな言葉です。

「ここに居ていいのか分からない」
「自分は、この職場に受け入れてもらえているんでしょうか」

つまり、不安の正体は能力の問題ではなく、居場所の問題です。

まだビジネスのことも、現場のことも、何も分からない。
それは本人たちが一番よく分かっています。
だからこそ彼らは、
「ちゃんと役に立てるか」よりも前に、
「ここで安心して存在していいのか」を無意識に確かめています。

一方で、迎える側である私たちはどうでしょうか。

「まずは仕事を覚えてもらわないと」
「基本はこれだから、しっかり教えないと」

そう思う気持ちは、痛いほど分かります。
現場は忙しいし、余裕もない。
だからこそ、教えること=善になりやすい。

ただ、新人の心の中では、
「何を教わったか」よりも、
「どんな空気で迎えられたか」の方が、ずっと深く残っています。

表情、声のトーン、ちょっとした一言。
「困ったら声かけてな」
「最初は分からんくて当たり前やで」

──こうした何気ない関わりが、
「この職場でやっていけそうだ」という安心感につながっていく。

教える前に、整えるものがある。
それが、新社会人を迎える現場で、
私たちが最初に意識したいポイントなのだと思います。

なぜ上司は、つい「教える」ことから始めてしまうのか

善意が空回りする瞬間に起きていること

新人を前にしたとき、
多くの上司や先輩が、無意識にスイッチを入れるものがあります。
それが、「教えなければ」「育てなければ」という責任感です。

これは決して悪いことではありません。
むしろ、真面目で誠実な人ほど、このスイッチは早く入ります。

ただ、その善意が、知らず知らずのうちに空回りしてしまう瞬間があります。

例えば、新人がまだ全体像も分からない段階で、
専門用語や手順、過去の事例を一気に説明してしまう。
本人は必死にうなずいているけれど、内心ではこう思っている。

「質問していいレベルかどうかも、分からない…」

ここで起きているのは、
「教える側」と「受け取る側」の前提のズレです。

教える側は、
「早く戦力になってほしい」
「失敗させないようにしてあげたい」
という想いで動いている。

一方、新人側は、
「この場でどう振る舞えばいいのか」
「変なことを言って、浮かないだろうか」
という不安と緊張の真っただ中にいる。

つまり、
知識の不足ではなく、心理的な余白が足りていない状態です。

この余白がないまま指導が続くと、
新人は「分からない」と言えなくなります。
結果として、表面的には問題なく進んでいるように見えても、
内側では、分からないことが静かに積み上がっていく。

そしてある日、突然つまずく。
あるいは、静かに気持ちが離れていく。

「ちゃんと教えたはずなのに」
そう感じたとき、
実は“教え方”ではなく、
教える前の関係づくりが抜け落ちていた、
というケースは少なくありません。

善意は、ときに強くなりすぎる。
だからこそ一度、立ち止まってみる。

「今、この人は何を分かっていないのか」ではなく、
「今、この人は何に不安を感じているのか」。

そこに目を向けられるかどうかが、
その後の育成の質を大きく左右していくのだと思います。

指導より支援──やる気が高まる関わり方の正体

新人の主体性を引き出すコミュニケーション

「指導より支援」という言葉は、
一見すると、少し抽象的に聞こえるかもしれません。

では、現場でいう“支援”とは何か。
それは、答えを先に渡すことではなく、
考える余白を一緒につくる関わり方だと、私は捉えています。

新人に対して、
「これはこうやるんやで」
と教えるのは簡単です。
短期的には、確かに早いし、ミスも減るでしょう。

ただ、それが続くと、
新人はいつの間にか「判断を預ける人」になってしまう。
自分で考える前に、
「どうすればいいですか?」が口癖になる。

一方、支援のスタンスに立つと、
問いかけが変わってきます。

「どう思う?」
「どこが一番分からん?」
「ここまでやってみて、何を感じた?」

この問いには、正解はありません。
だからこそ、新人は自分の言葉で考え始める

最初は、的外れな答えが返ってくることもあります。
でも、それでいい。
考えた痕跡があること自体が、成長の芽だからです。

ここで大事なのは、
「正すこと」よりも「受け止めること」。

「なるほど、そう考えたんやな」
「その視点は面白いな」

こうした一言があるだけで、
新人の中に「考えていいんだ」という安心が生まれます。

主体性は、
「持て」と言われて持てるものではありません。
扱われ方の積み重ねによって、
少しずつ育っていくものです。

指導より支援。
それは、手取り足取りをやめることではなく、
新人を“未完成な戦力”ではなく、
一人の考える存在として扱う覚悟なのかもしれません。

新人の声を聴ける職場、聴けない職場の決定的な違い

「意見きかせてぇ」が機能する組織の条件

意見きかせてぇ
この一言は、軽やかに見えて、実はとても重たい言葉です。

なぜなら、
本当に意見を求めているのか、
それとも「聞いている体(てい)」なのか。
新人は、その空気を驚くほど敏感に感じ取るからです。

形だけの問いかけは、すぐに見抜かれます。

「何か意見ある?」
と聞かれても、
その後に沈黙が流れ、
誰かが発言した瞬間に空気が固まる。

あるいは、
「いや、それは違うな」
「前にも言ったけどさ」

こうした反応が一度でもあると、
新人は次から、何も言わなくなります。

つまり、
意見を言わないのではなく、言えなくなる

「意見きかせてぇ」が機能する組織には、
共通する前提があります。

それは、
意見=評価ではない
という空気が、きちんと共有されていること。

意見は、未完成でいい。
的外れでもいい。
その時点での視点や感じ方として、
いったん受け止められる。

「そう見えたんやな」
「そう感じた理由、もう少し聞かせて」

この一言があるだけで、
場の安全性は大きく変わります。

新人が意見を出せるようになるのは、
自信がついたからではありません。
否定されないと、体で分かったときです。

だからこそ、
「意見きかせてぇ」は、
言葉だけ真似しても、機能しない。

その言葉が自然に出てくる背景──
日頃の関わり方、受け止め方、
そして、リーダー自身の余白。

ここが整って、はじめて、
その一言は、生きた言葉になります。

新人を迎える側こそ、不安と向き合う必要がある

経営者・リーダーの在り方が空気をつくる

新人を迎える職場の空気は、
制度やマニュアルで決まるものではありません。

結局のところ、
一番強く影響するのは、経営者やリーダーの在り方です。

忙しそうにしている背中。
余裕のない表情。
言葉では「何でも聞いて」と言いながら、
実際には話しかけづらい雰囲気。

新人は、それらを
説明されなくても、感じ取っています。

だから私は、
新人育成は「新人の問題」ではなく、
迎える側の姿勢が映し出される鏡だと思っています。

新人が黙っているとしたら、
それは本人の消極性ではなく、
「黙っていた方が安全だ」と学習しているのかもしれない。

逆に、
新人が少しずつ自分の言葉で話し始めたとしたら、
それは、その職場に
「話しても大丈夫な空気」がある証拠です。

経営者やリーダーにできることは、
何か特別なことではありません。

完璧な答えを持とうとしないこと。
分からないときに、分からないと言えること。
そして、人の話を最後まで聴くこと。

こうした姿勢が、
静かに、しかし確実に、
組織の空気をつくっていきます。

新人は、
「何を教わったか」よりも、
「どんな人たちと働いているか」を、
ずっと覚えています。

だからこそ、
新人を迎えるこのタイミングは、
組織にとっても、自分自身にとっても、
在り方を見直すチャンスなのかもしれません。

教える前に、聴く。
指導する前に、支える。

その積み重ねが、
人が育ち、組織が続いていく土台になる。
私は、そう信じています。

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