あなたの「普通」は誰の普通?──経営者が新卒に伝えるべき本当の価値観

経営者に必要なノウハウ

あなたの「普通」は誰の普通?──経営者が新卒に伝えるべき本当の価値観

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ふさぽ

後継者をホンマモンに育む、応援をしています。社長を19年経験してわかったこと。それは'トップ自らの人生'を豊かにすること…人との”ツナガリ”づくりを通して。その入り口として、口癖にこだわり、Xでは発信中。『口ぐせは生きグセ』人生観に裏うちされた、事業づくりがトクイ種目。 ホンマデッカァw

「当たり前」は、思っている以上に人を分ける

経営者が無意識に使っている「普通」という言葉

私たち経営者は、日々の会話の中で、驚くほど自然に普通「当たり前」という言葉を使っています。
「普通はこうするやろ」
「それくらい、当たり前やん」
——意識せず口から出ていることも多いのではないでしょうか。

ただ、この「普通」という言葉ほど、聞く側の立場によって意味が変わるものはありません。
経営者にとっての普通は、これまで積み重ねてきた経験、失敗、修羅場、責任の重さをくぐり抜けてきた結果として形成されたものです。一方で、新卒社員にとっての普通は、学生生活や限られたアルバイト経験、そしてこれから社会に出ていくという期待と不安の中で形づくられたものです。

この二つは、そもそもスタート地点が違います。
それにもかかわらず、経営者の「普通」を基準に語ってしまうと、新卒はこう感じます。
「自分はできていないのではないか」
「ここでは、分からないことを聞いてはいけないのかもしれない」

私は多くの現場で、制度や教育以前に、経営者の何気ない一言が空気を決めている場面を見てきました。
「普通」という言葉は、便利であるがゆえに、相手の成長の芽を無意識に摘んでしまうこともある。
だからこそ、経営者自身がまず、「自分は、どんな普通を前提に話しているのか」を立ち止まって見直す必要があるのだと感じています。

あなたの普通は、誰の経験からできているのか

経営者の原体験と価値観の正体

経営者が「それが普通や」と感じている背景には、必ずと言っていいほど原体験があります。
若い頃に叱られた経験、失敗して頭を下げた日、数字が合わず眠れなかった夜、誰にも相談できなかった決断の瞬間。そうした積み重ねが、今の価値観を形づくっています。

私自身も、振り返れば「あの時があったから、今がある」と思える出来事がいくつもあります。
ただ、その原体験は、言葉にしない限り相手には伝わりません。
経営者の頭の中では一本の線でつながっている価値観も、新卒にとっては、いきなり結果だけを見せられている状態なのです。

例えば、
「主体的に動け」
「自分で考えろ」
という言葉の裏には、経営者自身が「誰にも教えてもらえず、自分で考え抜いた経験」があるかもしれません。
しかし、その前提を共有しないまま投げかけられた言葉は、新卒にはこう響きます。
「放置されている」
「頼ってはいけないのだろうか」

ここで大切なのは、価値観を押し付けることではありません。
自分の原体験を、語れる言葉に変えることです。
なぜそれを大切にしているのか、どんな失敗があったのか。
それを少しだけ開示するだけで、新卒との距離は驚くほど縮まります。

経営者の価値観は、教えるものではなく、にじみ出るものです。
だからこそ、その源泉である原体験を、自分自身が理解し、言語化しておくことが、新卒採用や育成の土台になると、私は感じています。

新卒世代が立っている“別のスタートライン”

新卒社員が社会に出るとき、彼らは決して「何も分かっていない状態」からスタートしているわけではありません。
ただし、そのスタートラインは、私たち経営者が社会に出た頃とは、まったく違う場所に引かれています。

情報量は圧倒的に多く、正解らしきものは簡単に手に入る。
一方で、失敗する前に回避する術も豊富で、「痛い思いをして学ぶ」機会は相対的に減っています。
これは良し悪しの話ではなく、環境の違いです。

だからこそ、経営者が自分の経験を基準にして、
「昔はもっと厳しかった」
「これくらいで弱音を吐くな」
と語ってしまうと、新卒はこう受け取ります。
「自分たちは、最初から認められていないのではないか」

新卒世代は、決して楽をしたいわけでも、責任を避けたいわけでもありません。
ただ、「どこまでが期待されていて、どこからが挑戦なのか」を知りたいのです。
この境界が見えないと、人は一歩を踏み出せません。

経営者に求められているのは、過去の成功体験をなぞらせることではなく、
今のスタートラインに立つ彼らを、どう導くかという視点です。
そのためには、自分の「普通」を一度横に置き、相手の立ち位置から世界を見る想像力が欠かせません。

新卒採用とは、若い人を選ぶ行為であると同時に、
経営者自身が、時代とどう向き合うかを問われる場でもある。
私は、そう感じています。

新卒が会社を判断しているのは、制度より空気

空気・水・時間──「見えない当たり前」が伝えているメッセージ

人は、言葉よりも先に「空気」を感じ取っています。
オフィスに入った瞬間の空気感、朝の挨拶のトーン、忙しい時の声の掛け方。
これらはすべて、誰かが教えなくても、新卒が真っ先に受け取る情報です。

空気や水と同じで、当たり前すぎて意識されないものほど、実は強いメッセージを持っています。
例えば、時間の使い方。
定時という制度があっても、上司や経営者が当たり前のように長時間働いていれば、新卒は「早く帰ってはいけない空気」を読み取ります。

また、「忙しいから後で」と言われ続ける職場では、
新卒は「今は話しかけるべきではない」と学習していきます。
その結果、報告や相談が減り、ミスが表に出た時だけ叱られる——そんな悪循環が生まれてしまう。

経営者が発するメッセージの多くは、言葉ではなく、日常の振る舞いです。
感謝が飛び交う職場では、人は自然と人に目を向けるようになります。
余裕のない空気が常態化している職場では、人は自分を守る行動を優先します。

新卒は、理念やビジョンよりも先に、
「この会社で、人として大切にされているか」
を、こうした見えない当たり前から感じ取っています。

だからこそ、経営者にとって重要なのは、制度を整えること以上に、
自分自身が、どんな空気をまとっているかを自覚することなのだと、私は感じています。

「ありがとう」が口癖の経営者に、人は育つ

感謝が文化になる組織、ならない組織の違い

ありがとうという言葉は、とても不思議です。
言おうと思えば、誰でも今日から使える。
しかも、お金も時間もかからない。
それなのに、組織によっては、ほとんど聞こえてこない。

感謝が文化にならない組織には、共通点があります。
それは、「やって当たり前」「できて当然」という前提が、無意識のうちに共有されていることです。
結果が出たら次の要求、問題があれば指摘。
誰かの支えやプロセスは、いつの間にか背景に溶け込んでしまう。

一方で、感謝が自然に飛び交う組織では、経営者自身がまず口にしています。
成果に対してだけでなく、
「動いてくれてありがとう」
「気づいてくれて助かった」
そんな一言が、日常の中で何気なく使われている。

新卒は、その姿を驚くほどよく見ています。
「ありがとう」と言われた経験は、
「自分はここにいていいんだ」
という安心感に変わり、次の一歩を踏み出す勇気になります。

感謝は、モチベーション施策ではありません。
評価制度でも、テクニックでもない。
経営者の人としての姿勢が、そのまま組織文化になるのです。

私は多くの経営者を見てきましたが、
人が育つ会社には、必ずと言っていいほど、
「当たり前のことに、きちんと感謝できる空気」
が流れています。

その空気は、言葉で掲げる理念よりも、はるかに強く、新卒の心に残っているのです。

価値観を教えるのではなく、映し出すという選択

経営者の在り方が、新卒の未来を決めている

新卒社員は、経営者の言葉以上に、その在り方を見ています。
どんな判断をするのか。
誰の話に耳を傾けるのか。
うまくいかない時に、誰のせいにするのか。

経営者が余裕を失ったときの振る舞いは、特に強く記憶に残ります。
焦りや苛立ちを、そのまま空気に乗せてしまうのか。
それとも、一度立ち止まり、状況を整理し、言葉を選ぶのか。
その差は、新卒にとって「この会社で、どんな大人になれるのか」という未来像そのものです。

新卒は、経営者を完璧な存在だとは思っていません。
むしろ、人間らしく悩み、迷いながらも、
「どう在ろうとしているのか」
を感じ取ろうとしています。

だからこそ、経営者が
「自分もまだ学びの途中や」
「完璧ではないけれど、より良くなろうとしている」
そんな姿勢を見せることは、何よりの教育になります。

私は、講演や研修の場で、よくこうした話をします。
スキルやノウハウは、後からいくらでも身につく。
しかし、どんな姿勢で仕事と向き合うのかは、最初に触れた大人の影響が大きい、と。

新卒採用とは、人材を迎え入れる行為であると同時に、
経営者自身の生き方を、次の世代に手渡す行為でもあります。
その自覚を持った瞬間から、組織の空気は、確実に変わり始めるのだと、私は感じています。

普通を問い直すことは、経営を問い直すこと

新卒採用は、経営者自身の現在地を映す鏡

新卒採用という場面は、つい
「学生をどう見極めるか」
「どんな人材を採るべきか」
という視点になりがちです。

しかし、現場で起きていることを丁寧に見ていくと、実はその逆だと感じます。
新卒採用とは、経営者自身が、今どこに立っているのかを映し出す鏡なのです。

当たり前に感じていること。
無意識に使っている言葉。
感謝を伝えている頻度。
時間や人に対する向き合い方。
それらすべてが、新卒という“外から来た存在”によって、はっきりと可視化されます。

「最近の若者は分からない」と感じたとき、
それは世代の問題ではなく、
自分の普通が、どこまで言語化できているか
どこまで開かれているか
を問いかけられているサインかもしれません。

私がこれまで多くの経営者と向き合う中で感じてきたのは、
人が育つ会社ほど、経営者が自分自身をよく見つめているという事実です。
正解を持っているからではありません。
問い続けているからです。

「自分にとっての普通とは何か」
「当たり前になりすぎているものは何か」
「今日、誰にありがとうと言えただろうか」

こうした問いを持ち続ける経営者のもとには、
不思議と、人が集まり、人が育ち、
やがて組織そのものが、静かに強くなっていきます。

新卒採用は、未来への投資であると同時に、
経営者自身が、これからどう在りたいかを確認する機会
私は、そう受け止めています。

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