「笑倍(しょうばい)」の経営──数字より先に“笑顔”を増やす力

経営者に必要なノウハウ

「笑倍(しょうばい)」の経営──数字より先に“笑顔”を増やす力

2025年10月9日

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ふさぽ

後継者をホンマモンに育む、応援をしています。社長を19年経験してわかったこと。それは'トップ自らの人生'を豊かにすること…人との”ツナガリ”づくりを通して。その入り口として、口癖にこだわり、Xでは発信中。『口ぐせは生きグセ』人生観に裏うちされた、事業づくりがトクイ種目。 ホンマデッカァw

「増える」とは何を意味するのか?──経営者の価値観を映す鏡

フォロワーや数字の“増加”がもたらす錯覚

増える」という言葉は、経営者にとって魔法のような響きを持ちます。
売上が増える、顧客が増える、フォロワーが増える──。
どれも一見、前進や成長の証に思えます。

しかし、私は多くの経営者と関わる中で、増えること”が必ずしも豊かさを生むとは限らないと痛感してきました。
数字が伸びているのに、心が満たされていない。
人が増えているのに、つながりが浅くなっている。
そんな現場を、何度も見てきたからです。

SNSの「いいね!」やフォロワー数は、可視化された評価のようでいて、
実際には“一時的な関心”に過ぎないこともあります。
そこに安心を求めてしまうと、いつの間にか「数字の奴隷」になってしまう。

大切なのは、増えることよりも、どう増やすかです。
数字を増やすために笑顔を失っていないか。
つながりを増やすために信頼を削っていないか。
その問いこそが、経営者の「人間力」を映す鏡になるのではないでしょうか。

「笑倍(しょうばい)」という考え方の原点

「商売は笑倍」──。
この言葉は、ある経営者が私に語ってくれた忘れられない一言です。
にするのは、売上でも利益でもない。笑顔やで。」
その瞬間、私はハッとしました。

商売という言葉には、あきない(飽きない)”という語源があるように、
本来は人と人との関係を育む行為です。
そこに笑顔がなければ、どれだけ商品が良くても、どれだけ効率が上がっても、
やがて心が離れ、数字もついてこなくなる。

“笑倍”とは、経営を数字でなく「人の温度」で見る発想です。
まず目の前の人を笑顔にする。
すると、その笑顔が次の笑顔を呼び、信頼とつながりが広がっていく。
結果として数字が増えていく──。
この**「笑顔 → 信頼 → 数字」**という順番こそが、“笑倍”の真髄です。

数字の裏には、必ず人の感情が存在します。
だからこそ、経営者の笑顔が曇れば、社員の笑顔も消え、
社員の笑顔がなくなれば、お客様の笑顔も離れていく。

“笑倍”の経営は、単なる理想論ではなく、
**人の笑顔を資産と捉える「心の経営哲学」**なのです。

“笑倍”の本質──数字の前に笑顔を増やすという哲学

「商売は笑倍」と語った経営者の真意

「商売は“笑倍”やで。」
その言葉を最初に聞いたのは、地方で長く事業を営む、ある老舗企業の社長でした。
70代を超えてなお現役で現場に立つその姿には、数字以上の存在感がありました。

当時、私は率直に尋ねました。
「どうすれば業績が安定し続けるのですか?」
社長は少し笑いながら、こう返してくれました。

「うちは、笑顔が倍になったらええんや。
売上はそのあと勝手に倍になる。
それが“笑倍”の商売っちゅうもんや。」

その言葉には、長年の実践からにじみ出た説得力がありました。
この経営者にとって“笑倍”とは、ただのスローガンではなく経営の順番そのもの。
社員やお客様の笑顔を増やすことを最優先にすることで、
結果的に信頼が積み重なり、数字という成果がついてくる。

笑顔のない数字は、いずれ持続しません。
しかし、笑顔のある現場には、必ず次の仕事が生まれます。
その積み重ねが、何十年にもわたる企業の安定と繁栄を支えているのです。

“笑倍”とは、利益を追う経営ではなく、笑顔を循環させる経営
この社長の言葉には、そんな“人間味のある経営哲学”が息づいていました。

笑顔を軸にした経営がもたらす3つの好循環

“笑倍”の経営を実践することで生まれる成果は、単に「感じが良くなる」というレベルではありません。
それは、**組織と顧客と社会を巻き込む「3つの好循環」**をもたらします。


① 社内の空気が変わる

笑顔は伝染します。
トップが笑顔でいると、社員も安心し、会話が増え、アイデアが出やすくなります。
逆に、リーダーの顔がこわばっていると、言葉をかけることすらためらわれる。
表情ひとつで、組織の温度は大きく変わるのです。


② お客様の信頼が深まる

笑顔のある接客や対応は、単なるマナーではなく「信頼の証」です。
お客様は商品の良し悪しだけでなく、対応する人の表情から誠意を感じ取っています。
笑顔があることで、「またこの人から買いたい」と思ってもらえる。
それが、長期的なリピートや紹介という形で数字に返ってきます。


③ 社会とのつながりが広がる

笑顔の経営は、地域や取引先など外部の関係にも良い波を起こします。
社員がいきいきと働いている会社は、周囲からも応援される。
地域貢献の輪が自然と広がり、企業としての信頼資産が増えていくのです。


この3つの好循環は、どれも「数字の前に笑顔を置く」という原則から生まれます。
一見遠回りのようでも、笑顔を軸にした経営は、最終的にもっとも確かな成果を生む最短ルートなのです。

信頼とつながりを育てる経営の姿勢

“つながりの量”ではなく“深さ”を重んじる

SNSの時代になり、「つながり」がどんどん可視化されるようになりました。
フォロワー数、友達数、登録者数──。
数が多いほど影響力があるように見える時代です。

しかし、私は多くの経営者を見てきて感じます。
つながりの量”が多くても、“深さ”がなければ信頼は育たない。
経営は、数で測れない関係の質で決まるということです。

ある中小企業の社長が、こんな言葉を残しています。

「うちは顧客数より、顧客の“笑顔数”を大事にしてるんです。」

この発想にこそ、真のリーダーシップがあります。
お客様一人ひとりとの関係を深めようとする姿勢が、やがてブランドになり、口コミになり、数字を動かすのです。

つながりの“深さ”とは、相手の立場を理解しようとする心の姿勢。
そこに、信頼の根が生まれます。
そしてその信頼の根が広がると、組織は嵐に強くなる。

“笑倍”の経営とは、まさにこの「深いつながりづくり」の積み重ねです。
それは一朝一夕ではできませんが、積み上げるほどに揺るぎない企業文化を築いていきます。

笑顔が信頼に変わる瞬間とは

経営の現場で、笑顔は“飾り”ではありません。
それは、相手に「あなたを大切に思っています」というメッセージを伝える最初の信号です。

人は、言葉よりも表情に心を動かされます。
どれほど立派な理念を掲げていても、笑顔のない対応をされれば、その理念は伝わりません。
逆に、心からの笑顔がひとつあるだけで、相手の不安や警戒がふっとやわらぐ。
そこから、信頼の扉が開いていくのです。

私が関わったある企業では、社員研修の一環として「笑顔の挨拶」を3か月間、徹底的に続けました。
最初は照れや違和感もあったようですが、次第に職場の空気が変わり、
お客様の反応も「最近、雰囲気が明るくなったね」と変わっていきました。
その結果、売上よりも先に“再来店率”が上がったのです。

数字を動かすのは、心の温度です。
そしてその温度を一瞬で伝えるのが、笑顔。
だからこそ、**笑顔は「信頼の通貨」**なのです。

“笑倍”の経営とは、笑顔をコストではなく、
信頼を生み出すための最大の投資として扱う姿勢なのだと、私は考えています。

数字は“結果”であり“目的”ではない

利益より先に、人と人との温度を高める

数字を伸ばそうとする時、私たちはつい「効率」や「生産性」に目を向けがちです。
もちろん、経営にはそれらも必要です。
しかし、それよりも先に考えるべきものがあります。
それが、**人と人との“温度**です。

温度とは、気持ちの温かさ、関心の深さ、そして関係性のぬくもり。
この温度が下がると、どんなに仕組みが整っていても、組織は動かなくなります。
逆に温度が上がると、同じ仕事でも成果が変わります。

ある中堅企業の社長が、こんなことを話してくれました。

「利益を出すより先に、社員の笑顔を取り戻したい。」

その言葉どおり、まず取り組んだのは社内の“ありがとう”運動。
部署間で日々の感謝を伝え合うだけのシンプルな試みでしたが、
半年後には離職率が減り、チームの生産性が上がりました。

利益を追う経営から、温度を上げる経営へ
笑顔を交わすことで信頼が育ち、信頼が協働を生み、結果として数字が伸びていく。
この順番を大切にすることこそが、“笑倍”の真価なのです。

「数字を追う経営」から「笑顔が生む経営」へ

「今期の目標は〇〇%アップ!」
多くの会議で最初に聞かれるのは、数字の話です。
しかし、その数字を生み出すが何なのかを、私たちはどれほど見つめているでしょうか。

数字を追う経営は、短期的には成果を上げます。
けれど、やがて現場に疲労や惰性が広がり、笑顔が消えはじめる。
すると不思議なことに、売上も利益も伸び悩みます。

一方で、「笑顔が生む経営」は逆です。
笑顔が増えると、職場に活気が生まれます。
活気はアイデアを呼び、顧客満足を高め、結果として数字を動かす。
つまり、**数字は“追うもの”ではなく、“笑顔の結果として生まれるもの”**なのです。

私が支援してきたある企業では、
数字は成果、笑顔は姿勢」という社内標語を掲げました。
この一言が浸透するにつれ、社員の表情が変わり、顧客の声も明るくなった。
1年後、営業目標を無理に設定しなくても、自然と業績が上がっていきました。

経営は、笑顔の総量で決まる。
それは、人の心を中心に置いた経営者だけが体験できる“循環の奇跡”です。
数字を追うのではなく、笑顔が数字を導く経営
この転換こそが、“笑倍”という言葉の本当の意味だと、私は考えています。

“笑顔倍増”が未来を創る──経営者に求められるリーダーシップ

笑顔を生み出すリーダーの条件

笑顔を増やす経営の原点は、やはりリーダーの姿勢にあります。
リーダーの表情が変われば、組織の空気が変わる。
そして空気が変われば、行動と成果が変わる。
この順番を体現できる人こそ、真のリーダーです。

私がこれまでに出会った「笑顔を生み出すリーダー」には、共通点が3つあります。


① 自分から笑う勇気を持っている

リーダーは孤独な存在です。
悩みや不安を抱えたまま現場に立つことも少なくありません。
それでも、自分から笑う勇気を持つ。
この「最初の笑顔」が、周囲に安心を与え、チームを動かすきっかけになります。


② 感情より信頼を優先する

時に厳しい判断を下す場面でも、感情的にならず、相手を信じる姿勢を崩さない。
笑顔の裏にある“信頼の強さ”が、部下に伝わる。
その積み重ねが「この人と働きたい」と思わせる土台になります。


③ 結果よりも過程を喜べる

成果を出すことも大切ですが、努力や挑戦の過程を讃えることができる人。
小さな成長を一緒に喜べるリーダーの周りには、自然と笑顔が増えていきます。


笑顔を生み出すリーダーは、無理に明るく振る舞う人ではありません。
相手を思いやる余裕」を持つ人です。
経営とは、数字を競うゲームではなく、人を育てるドラマ。
そのドラマを笑顔で演じきる覚悟こそ、これからの時代に求められるリーダーの条件なのです。

「笑倍」マインドが組織と地域を変える

“笑倍”という言葉の力は、企業の中だけにとどまりません。
リーダーが笑顔を軸にした経営を実践すれば、その波は社内を超えて、地域や取引先、家族、そして社会へと広がっていきます。

ある地方企業では、社長が毎朝の朝礼で「今日も笑倍でいこう!」と声をかけています。
最初は照れくさそうだった社員たちも、次第にその言葉を合言葉にするようになり、
お客様との会話が明るくなり、職場の雰囲気が変わりました。

この会社では、地域の商店会の清掃活動にも自発的に参加するようになり、
「いつも笑顔であいさつしてくれる会社さんやね」と、地域からの信頼も高まりました。
やがてその信頼は、新たな取引や協業のきっかけを生み出しています。

“笑倍”マインドは、人の笑顔を通じて組織文化を変え、組織の変化を通じて社会の空気を変える。
それは、経営者一人の表情から始まる小さな波紋です。

経営とは、結局「人の笑顔をどれだけ増やせたか」という仕事です。
数字や業績は、その結果としてあとからついてくる。
だからこそ、笑顔を中心に置いた経営が、未来を創るのです。

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