次代や次部門を創る、後継者へ
現場で、聞こえてくる
「決めることが、苦手、遅い、疲れる」と
その度に蘇る、先人が私に発した口癖の数々
「答えや情報がすべて見え、決定できるものはない」
「経営者は決めるのが仕事」
「決め方を決めておく」
「最終決定者の優柔不断は犯罪」
意思決定はダイジ— ふさぽ@経営者 (@future_support) May 10, 2025
なぜ「決めること」がこんなに難しいのか?
現場でよく聞く若手の悩みと背景
経営の現場に立つ若いリーダーや後継者と話していると、よく耳にするのがこの言葉です。
「決めるのが苦手で…」
「時間ばかりかかってしまって、結局誰かの判断を待ってしまう」
「決断するとドッと疲れるんです」
決して能力がないわけではありません。真面目で、慎重で、失敗を避けようとするがゆえの葛藤があるのでしょう。現代は情報も多く、考慮すべき要素も複雑ですから、どれだけ分析しても「完璧な答え」にたどり着かない。その結果、動きが鈍くなってしまうのです。
しかし、それでも「決めること」から逃げてしまえば、次の景色は見えてきません。
私自身も若い頃、判断に迷い、夜遅くまで資料と向き合っていたことが何度もありました。そんな時、ある先輩経営者からこう言われたのを今でも覚えています。
「情報が全部揃ってから決められることなんて、経営にはひとつもない」
この言葉は、今でも私の中に残っています。決断には、ある種の「覚悟」が必要なのだと。
次は、その「決断の本質」について、私が先人から学んだことをお話ししたいと思います。
先人から学んだ“決断の本質”とは
「答えが揃うことはない」という前提に立つ
経営において、すべての情報が揃ったうえで決断できる場面というのは、実際にはほとんど存在しません。にもかかわらず、判断を先送りしてしまう人が多いのは、「正解がある」と思い込んでいるからではないでしょうか。
私がかつて経営の現場で決断を迷っていた時、ある先人から厳しくこう言われました。
「そもそも“全部見えてる決定”なんて、存在しない」
「経営は常に“足りない情報”の中で、ベストを選び続ける仕事だ」
この言葉は、私の意思決定の姿勢を根本から変えてくれました。
つまり、「不完全な情報の中でどう判断するか」に本質があるということです。そしてもうひとつ重要なのは、自分の中に“決める基準”を持っているかどうかです。これが曖昧だと、状況に流されて判断がブレてしまいます。
完璧な答えを探すより、「限られた時間の中で、どこまで確信を持てるか」。そして、自分がその決断に責任を持てるかどうか。それこそが、リーダーとして求められる力なのだと、私は痛感しました。
次は、なぜ「決めること」が経営者の最も重要な仕事なのか、さらに深掘りしていきます。
経営者の仕事は“決めること”である理由
判断を先送りすることのリスク
経営者やリーダーの役割とは何かと問われれば、私は迷わず「決めること」と答えます。もちろん、戦略を練ったり、組織を育てたり、対外的な対応をしたりと仕事は多岐にわたります。しかし、最も大きな影響を与えるのは「意思決定」です。
現場でよくあるのが、「もう少し様子を見ましょう」という先送りの判断。これは一見、安全に見えますが、実はリスクでもあります。なぜなら、何も決めないこと自体が、一つの意思決定だからです。そしてそれは、多くの場合、状況を悪化させる「静かなリスク」になります。
私が経験したあるプロジェクトでは、方向性が定まらず、リーダーが決断を先送りしている間に、メンバーの間に迷いや不信感が広がりました。結局、決断が遅れたことで市場のタイミングを逃し、チャンスを逸したのです。
スピード感のある経営が求められる今、迷っている時間が損失につながることも少なくありません。完璧な判断はできなくとも、「現時点でベスト」と信じて一歩を踏み出すこと。それが、組織を動かし、信頼をつくる経営者の責任だと私は考えています。
次は、その“決める力”を支える具体的な手段、「決め方を決めておく」ことについてお話しします。
「決め方を決めておく」という戦略
優柔不断を防ぐための思考フレーム
「決断が遅れる」「迷って動けない」といった問題に直面する若手リーダーに、私がよく伝えるのが「決め方を、あらかじめ決めておくこと」です。
これはつまり、「どんな基準で」「どのタイミングで」「誰が」「どうやって」意思決定するのかを、あらかじめルールとして設計しておくということです。
たとえば私の場合、以下のようなシンプルな基準をもって動いています。
時間軸を決める:「◯日までに決定する」と期限を設定する
判断基準を明文化する:「お客様にとっての価値」「収益性」「スピード」など
関係者の意見をいつ、どこまで取り入れるかを事前に決める
迷ったときの“優先順位”を整理しておく
こうした“思考の枠”を持っておくことで、判断の迷いが少なくなります。優柔不断は多くの場合、「どこを見て判断すべきかわからない」という混乱から生まれます。それを事前に整えておくことで、精神的な負荷も軽減され、決断がしやすくなるのです。
組織の中でも、共通の意思決定の基準やプロセスがあることで、メンバー間の理解と納得が深まり、結果的に動きが早くなります。
次は、「最終決定者の優柔不断は犯罪」という言葉の真意について、私なりの考えをお伝えします。
「最終決定者の優柔不断は犯罪」その真意とは?
組織に与える影響と信頼の重み
この言葉は、私がまだ経営の経験も浅かった頃、ある尊敬する経営者に言われたひと言です。
「最終決定者の優柔不断は、もう“犯罪”やと思え」
当時は少し過激に聞こえましたが、今ではその意味がよくわかります。
組織の最終決定者が「決められない」「迷ってばかりいる」状態が続くと、現場はどんどん疲弊していきます。なぜなら、人は「何を基準に動けばいいのか」が見えない状況に長く耐えられないからです。
たとえば、進むのか引くのかが決まらないまま時間だけが過ぎる。
そのあいだ、現場は準備も行動もできず、判断を仰ぎ続ける状態になります。結果、モチベーションは下がり、「誰も責任を取らない組織」になってしまうのです。
リーダーにとっての決断とは、単に選択すること以上に、「責任を引き受ける意思」を示す行為です。それによって、部下やメンバーは安心して自分の役割を全うできるようになります。
優柔不断は、何もしていないようでいて、実は大きな悪影響を生む。だからこそ、最終的な決断を担う立場の人間には、“迷っていること自体がリスク”になるという覚悟が求められるのだと思います。
次は、これからのリーダーに向けて、「決める力」をどう育てていくかについて、お話を続けます。
次世代リーダーに伝えたい「決める力」の育て方
若手が育つ環境と関わり方のヒント
「決める力」は、生まれ持った才能ではなく、経験の中で鍛えられていくものだと私は思っています。
だからこそ、次世代を担う若手リーダーには、日々の実践の中で“小さな決断”を積み重ねる場を持ってほしいと願っています。
まず大事なのは、失敗してもいい環境をつくることです。
若い人が意思決定に尻込みするのは、「間違えたら怒られる」「責任を取らされる」と思っているからです。ですが、実際に責任を負うのは上に立つ私たちの役割であり、彼らが安心してチャレンジできる環境を用意するのが、上司・経営者の仕事だと感じます。
そしてもうひとつは、問いかけることです。
「なぜそう判断したのか?」「どういう基準で選んだのか?」といった問いを投げかけることで、思考のプロセスを整理し、本人の中に“判断の軸”を育てることができます。
決断力とは、情報を集める力、リスクを見極める力、そして何より最終的に責任を引き受ける覚悟です。
それは、任せて、支えて、問い続けることで、少しずつ育っていくものです。
私自身も、今まで多くの先人に背中を見せてもらいながら育ってきました。
だから今は、次の世代にその姿勢と考え方を“手渡す”ことが、私の責任だと感じています。