優柔不断は罪? 経営の現場で問われる「決断力」の正体

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優柔不断は罪? 経営の現場で問われる「決断力」の正体

なぜ「決めること」がこんなに難しいのか?

現場でよく聞く若手の悩みと背景

経営の現場に立つ若いリーダーや後継者と話していると、よく耳にするのがこの言葉です。

「決めるのが苦手で…」
「時間ばかりかかってしまって、結局誰かの判断を待ってしまう」
「決断するとドッと疲れるんです」

決して能力がないわけではありません。真面目で、慎重で、失敗を避けようとするがゆえの葛藤があるのでしょう。現代は情報も多く、考慮すべき要素も複雑ですから、どれだけ分析しても「完璧な答え」にたどり着かない。その結果、動きが鈍くなってしまうのです。

しかし、それでも決めることから逃げてしまえば、次の景色は見えてきません。
私自身も若い頃、判断に迷い、夜遅くまで資料と向き合っていたことが何度もありました。そんな時、ある先輩経営者からこう言われたのを今でも覚えています。

「情報が全部揃ってから決められることなんて、経営にはひとつもない」

この言葉は、今でも私の中に残っています。決断には、ある種の「覚悟」が必要なのだと。

次は、その「決断の本質」について、私が先人から学んだことをお話ししたいと思います。

先人から学んだ“決断の本質”とは

「答えが揃うことはない」という前提に立つ

経営において、すべての情報が揃ったうえで決断できる場面というのは、実際にはほとんど存在しません。にもかかわらず、判断を先送りしてしまう人が多いのは、「正解がある」と思い込んでいるからではないでしょうか。

私がかつて経営の現場で決断を迷っていた時、ある先人から厳しくこう言われました。

「そもそも“全部見えてる決定”なんて、存在しない」
「経営は常に“足りない情報”の中で、ベストを選び続ける仕事だ」

この言葉は、私の意思決定の姿勢を根本から変えてくれました。

つまり、「不完全な情報の中でどう判断するか」に本質があるということです。そしてもうひとつ重要なのは、自分の中に“決める基準”を持っているかどうかです。これが曖昧だと、状況に流されて判断がブレてしまいます。

完璧な答えを探すより、「限られた時間の中で、どこまで確信を持てるか」。そして、自分がその決断に責任を持てるかどうか。それこそが、リーダーとして求められる力なのだと、私は痛感しました。

次は、なぜ「決めること」が経営者の最も重要な仕事なのか、さらに深掘りしていきます。

経営者の仕事は“決めること”である理由

判断を先送りすることのリスク

経営者やリーダーの役割とは何かと問われれば、私は迷わず「決めること」と答えます。もちろん、戦略を練ったり、組織を育てたり、対外的な対応をしたりと仕事は多岐にわたります。しかし、最も大きな影響を与えるのは「意思決定」です。

現場でよくあるのが、「もう少し様子を見ましょう」という先送りの判断。これは一見、安全に見えますが、実はリスクでもあります。なぜなら、何も決めないこと自体が、一つの意思決定だからです。そしてそれは、多くの場合、状況を悪化させる「静かなリスク」になります。

私が経験したあるプロジェクトでは、方向性が定まらず、リーダーが決断を先送りしている間に、メンバーの間に迷いや不信感が広がりました。結局、決断が遅れたことで市場のタイミングを逃し、チャンスを逸したのです。

スピード感のある経営が求められる今、迷っている時間が損失につながることも少なくありません。完璧な判断はできなくとも、「現時点でベスト」と信じて一歩を踏み出すこと。それが、組織を動かし、信頼をつくる経営者の責任だと私は考えています。

次は、その“決める力”を支える具体的な手段、「決め方を決めておく」ことについてお話しします。

「決め方を決めておく」という戦略

優柔不断を防ぐための思考フレーム

「決断が遅れる」「迷って動けない」といった問題に直面する若手リーダーに、私がよく伝えるのが「決め方を、あらかじめ決めておくこと」です。

これはつまり、「どんな基準で」「どのタイミングで」「誰が」「どうやって」意思決定するのかを、あらかじめルールとして設計しておくということです。

たとえば私の場合、以下のようなシンプルな基準をもって動いています。

  • 時間軸を決める:「◯日までに決定する」と期限を設定する

  • 判断基準を明文化する:「お客様にとっての価値」「収益性」「スピード」など

  • 関係者の意見をいつ、どこまで取り入れるかを事前に決める

  • 迷ったときの“優先順位”を整理しておく

こうした“思考の枠”を持っておくことで、判断の迷いが少なくなります。優柔不断は多くの場合、「どこを見て判断すべきかわからない」という混乱から生まれます。それを事前に整えておくことで、精神的な負荷も軽減され、決断がしやすくなるのです。

組織の中でも、共通の意思決定の基準やプロセスがあることで、メンバー間の理解と納得が深まり、結果的に動きが早くなります。

次は、「最終決定者の優柔不断は犯罪」という言葉の真意について、私なりの考えをお伝えします。

「最終決定者の優柔不断は犯罪」その真意とは?

組織に与える影響と信頼の重み

この言葉は、私がまだ経営の経験も浅かった頃、ある尊敬する経営者に言われたひと言です。

「最終決定者の優柔不断は、もう“犯罪”やと思え」

当時は少し過激に聞こえましたが、今ではその意味がよくわかります。
組織の最終決定者が「決められない」「迷ってばかりいる」状態が続くと、現場はどんどん疲弊していきます。なぜなら、人は「何を基準に動けばいいのか」が見えない状況に長く耐えられないからです。

たとえば、進むのか引くのかが決まらないまま時間だけが過ぎる。
そのあいだ、現場は準備も行動もできず、判断を仰ぎ続ける状態になります。結果、モチベーションは下がり、「誰も責任を取らない組織」になってしまうのです。

リーダーにとっての決断とは、単に選択すること以上に、「責任を引き受ける意思」を示す行為です。それによって、部下やメンバーは安心して自分の役割を全うできるようになります。

優柔不断は、何もしていないようでいて、実は大きな悪影響を生む。だからこそ、最終的な決断を担う立場の人間には、迷っていること自体がリスクになるという覚悟が求められるのだと思います。

次は、これからのリーダーに向けて、「決める力」をどう育てていくかについて、お話を続けます。

次世代リーダーに伝えたい「決める力」の育て方

若手が育つ環境と関わり方のヒント

「決める力」は、生まれ持った才能ではなく、経験の中で鍛えられていくものだと私は思っています。
だからこそ、次世代を担う若手リーダーには、日々の実践の中で“小さな決断”を積み重ねる場を持ってほしいと願っています。

まず大事なのは、失敗してもいい環境をつくることです。
若い人が意思決定に尻込みするのは、「間違えたら怒られる」「責任を取らされる」と思っているからです。ですが、実際に責任を負うのは上に立つ私たちの役割であり、彼らが安心してチャレンジできる環境を用意するのが、上司・経営者の仕事だと感じます。

そしてもうひとつは、問いかけることです。
「なぜそう判断したのか?」「どういう基準で選んだのか?」といった問いを投げかけることで、思考のプロセスを整理し、本人の中に“判断の軸”を育てることができます。

決断力とは、情報を集める力、リスクを見極める力、そして何より最終的に責任を引き受ける覚悟です。
それは、任せて、支えて、問い続けることで、少しずつ育っていくものです。

私自身も、今まで多くの先人に背中を見せてもらいながら育ってきました。
だから今は、次の世代にその姿勢と考え方を“手渡す”ことが、私の責任だと感じています。

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