船井総研のビジネスモデルがうまい。
通常コンサルがプロジェクトの売り切りだが、船井は
各業界向けの会員制度を作ってサブスクで収益化し、さらにコンサル契約を取って単価を上げるというモデル。…— ビジネスハックラボ@元スタートアップCEO (@yudai10311125) January 29, 2025

今回は「ビジネスハックラボ@元スタートアップCEO」さん(@yudai10311125)のポストを参考に、船井総研のビジネスモデルについて考察していきます
船井総研のビジネスモデルとは?
一般的なコンサルとの違い
一般的なコンサルティング会社は、クライアントごとに課題をヒアリングし、プロジェクト単位で契約を結び、成果物を提供する「プロジェクト型」のビジネスモデルを採用している。
このモデルの課題は、プロジェクトが終了すれば契約も終了するため、常に新規案件の獲得が必要になる点だ。新規クライアントの獲得にはコストがかかり、売上の安定性が確保しにくいという側面がある。
一方、船井総研は、会員制度を軸に「ストック型収益」と「ショット型収益」を組み合わせたハイブリッドモデルを採用している。単発のコンサル契約に依存せず、会員制度を通じて顧客と長期的な関係を築き、継続的な収益を確保する仕組みを構築している点が大きな特徴だ。
会員制度型の仕組みとは?
船井総研の会員制度は、業界ごとに経営者を集め、最新の経営ノウハウや成功事例を共有するプラットフォームを提供するものだ。これにより、経営者同士のネットワークが生まれ、実践的な知見の共有が可能になる。
この会員制度には、以下のような価値がある。
最新の業界情報やノウハウの提供
コンサルティング会社が蓄積した成功事例や、市場の最新トレンドを定期的に共有することで、会員企業の経営力を強化する。経営者同士のネットワーク構築
同じ業界で活動する経営者同士がつながり、課題を共有しながら解決策を見出すことができる。これにより、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性も高まる。段階的なコンサル契約への誘導
会員制度を通じて信頼関係を築いた後、さらに高度なコンサルティング契約へと誘導することで、顧客単価を向上させる。安定した収益の確保
通常のコンサルティング契約はプロジェクトが完了すると収益が途絶えるが、会員制度を組み込むことで継続的な収益を確保できる。
このように、船井総研のビジネスモデルは、単発のコンサルティング契約に頼るのではなく、継続的な関係を重視した仕組みになっている。
結果として、コンサルティングサービスの単価向上と安定した収益基盤の確立を両立することが可能になるのだ。
なぜこのモデルが優れているのか?
ストック型とショット型の融合
従来のコンサルティングビジネスは、単発契約(ショット型)の比率が高く、売上の安定性に課題があった。プロジェクトが終われば新たな案件を獲得する必要があり、その都度、営業コストやマーケティングコストが発生する。
一方、船井総研のモデルは、サブスクリプション(ストック型)と単発コンサル(ショット型)を組み合わせることで、安定した収益基盤を確保しながら、高単価案件も獲得できる仕組みになっている。
ストック型の強みは、継続的な売上を生み出し、キャッシュフローを安定させる点にある。さらに、会員制度を通じて信頼関係を築いた企業に対しては、追加のコンサルティング契約を提案しやすくなり、結果として契約単価の向上につながる。この戦略によって、単なる顧問契約にとどまらず、より深いコンサルティングサービスへと展開できる点が、このモデルの優れたポイントだ。
コミュニティ形成による価値創出
船井総研の会員制度がもたらすもう一つの大きな強みは、経営者同士のコミュニティ形成である。
コンサルタントが一方的にノウハウを提供するのではなく、業界のリーダー同士が課題を共有し、解決策を模索できる場を提供することで、会員自体に価値を持たせている。これは、単なる情報提供型のコンサルティングとは一線を画すアプローチである。
具体的には、以下のようなメリットがある。
相互学習の機会を生み出す
コンサルタントからの情報提供だけでなく、業界の最前線にいる経営者同士が意見を交わすことで、より実践的な知見が得られる。競争ではなく共創の場を作る
同じ業界の企業が互いに知見を共有することで、新たなビジネスの可能性が生まれ、業界全体の成長につながる。コンサルティング契約の自然な導線を作る
会員制度に参加することで、自社の課題を明確に認識し、より高度なサポートが必要になったタイミングで、追加のコンサル契約へとスムーズにつなげることができる。
このように、会員制度という形で価値を提供しながら、長期的な関係性を構築することで、顧客にとっても、コンサルティング会社にとっても、双方にメリットのあるモデルを確立している。これは、単発契約中心のコンサルティング会社にはない大きな競争優位性だ。
船井総研の戦略のポイント
コンサル契約へ自然につなげる流れ
船井総研の会員制度の巧みな点は、単なる情報提供や交流の場にとどまらず、最終的にコンサル契約へとスムーズに誘導できる仕組みになっていることだ。
これは、いわば「階段型の価値提供モデル」とも言える。会員制度の中で提供される価値が、徐々に経営者のニーズを引き上げ、より高度なコンサルティングへとつながる流れを生んでいる。
この戦略のポイントは、以下の3段階に整理できる。
情報提供とネットワーク形成(入口)
- 会員制度に加入することで、業界の成功事例や経営ノウハウが手に入る。
- さらに、同じ業界の経営者とつながることで、新たな視点を得られる。
経営課題の顕在化(関心喚起)
- 他の会員との交流を通じて、自社の課題をより明確に認識するようになる。
- 経営上のボトルネックが浮き彫りになり、「この課題を解決したい」というニーズが生まれる。
個別コンサルティング契約へ誘導(最終段階)
- 会員がより具体的な解決策を求めたタイミングで、個別コンサルティングの提案が可能になる。
- 既に船井総研の専門性や信頼性を理解しているため、契約のハードルが低い。
この流れにより、無理な営業をかけることなく、顧客自身が「必要だから契約する」という形を作ることができる。結果として、単価の高いコンサル契約へとつなげやすくなる。
クライアント同士のネットワーク効果
もう一つの重要な戦略が、クライアント同士のネットワークを活用する仕組みである。
一般的なコンサルティング会社では、クライアントごとに個別対応するため、経営者同士がつながる機会は少ない。しかし、船井総研は「業界ごとの会員制度」を活用し、経営者同士の交流を促進することで、会員自体の価値を高めている。
このネットワークがもたらす効果には、以下のようなものがある。
情報共有による相乗効果
- 他社の成功事例や経営戦略を直接学ぶことができる。
- これにより、コンサルティングの付加価値がさらに高まる。
ビジネスチャンスの創出
- 会員同士のつながりが、新たな事業提携や取引につながる可能性を生む。
- 経営者同士が互いに顧客となるケースもあり、ネットワーク内での経済圏が広がる。
継続的な関係性の維持
- クライアント同士の交流があるため、会員は簡単には脱退しにくい。
- 長期間にわたり関係を維持できるため、ストック型の収益基盤を強化できる。
このように、船井総研のモデルは単にコンサルティングサービスを提供するだけでなく、会員間のネットワークを活用し、事業価値を最大化する仕組みになっている。
この戦略が、同社の成長を支えている大きな要因の一つと言えるだろう。
このモデルが示唆する経営戦略
船井総研のビジネスモデルは、単なるコンサルティング業界に留まらず、受託ビジネスや人材ビジネスなど、幅広い業種に応用可能な戦略的示唆を含んでいる。
ここでは、具体的にどのように活用できるのかを解説する。
受託ビジネス・人材ビジネスへの応用
受託型のビジネスでは、「案件ごとの売上」に依存しやすいため、安定した収益を確保する仕組みが課題となる。
船井総研のような「会員制度」を活用することで、受託型のビジネスモデルにもストック型収益の要素を加え、事業の安定性を高めることができる。
例えば、以下のような応用例が考えられる。
コンサルティング業以外の受託ビジネス
- マーケティング支援会社が「月額制のマーケティング勉強会」を開催し、企業向けのナレッジシェアの場を提供する。
- その勉強会の参加者が、実務支援を求めたタイミングで個別契約につなげる。
人材ビジネスの応用
- 人材紹介会社が「特定業界の経営者向け会員コミュニティ」を作り、人材戦略や採用ノウハウを提供する。
- その中で採用課題が明確になった経営者が、個別の人材紹介サービスを依頼する。
デザイン・システム開発業界の応用
- デザイン会社やシステム開発会社が「業界向けの定期勉強会」や「コミュニティ」を運営し、最新トレンドを発信する。
- 参加企業が自社の課題に気づいた際に、追加のデザイン・開発案件を受注する。
このように、コンサルティング業界に限らず、専門知識を持つ業種であれば「会員制度」を活用して、新規案件を自然に創出できる仕組みを作ることが可能となる。
サブスク型収益を取り入れる方法
会員制度を導入することで、「単発案件の収益のみ」に依存せず、長期的に継続するストック型収益を得る仕組みを作ることができる。
この戦略を取り入れるためのポイントは、以下の3つだ。
情報提供の価値を明確にする
- 単なるニュースレターやコンテンツ配信ではなく、「業界の最前線の情報」や「実践的なノウハウ」を提供することで、会員にとっての価値を高める。
ネットワークを活用する
- 単独で情報提供するのではなく、会員同士の交流の場を設けることで、継続率を向上させる。
- これにより、単なる「購読型サブスク」ではなく、「コミュニティ型サブスク」にすることで、長期的な関係を築くことができる。
次のサービスへの誘導設計を行う
- 船井総研のように、会員制度を活用して顧客の課題を可視化し、より高度なサービスへと自然に誘導できる導線を作る。
このような仕組みを作ることで、短期的な案件収益だけでなく、安定的な収益基盤を構築し、事業の成長を持続させることができる。
まとめ:経営者が学ぶべきポイント
船井総研の会員制度型ビジネスモデルは、単なるコンサルティングの枠を超えた戦略的な仕組みを持っている。
これは、受託ビジネスや人材ビジネスを展開する企業にも大きな示唆を与えており、経営者が今後の事業展開に活かせるポイントが多く含まれている。
これからのコンサルのあり方
従来のコンサルティングビジネスは、単発契約を中心にしたプロジェクト型が主流であった。しかし、案件ごとに営業コストがかかり、売上が不安定になるという課題があった。
船井総研のモデルは、この課題を克服するために 「会員制度」×「ストック型収益」×「ショット型コンサル」 というハイブリッド戦略を採用している。
このモデルの本質は、単なるサービス提供ではなく、クライアントとの関係性を長期的に構築する点にある。経営者としては、単発の売上に依存するのではなく、顧客との関係をどう継続させ、価値提供を続けられるかという視点を持つことが重要だ。
自社ビジネスへの活かし方
このモデルから学べるポイントを整理すると、以下の3点が挙げられる。
顧客との関係性を長期化する仕組みを作る
- 一度の契約で終わるのではなく、継続的な関係を維持できる「会員制度」や「サブスクリプション」を活用する。
情報提供を単なる発信ではなく、価値あるネットワークにする
- 重要なのは、クライアントに役立つ情報を発信しながら、顧客同士のつながりを生み出す仕組みを作ること。
- これにより、企業の継続率やエンゲージメントが大幅に向上する。
ストック型とショット型をバランスよく組み合わせる
- ストック型の会員制度をベースにしつつ、クライアントが高度な支援を求めたタイミングでショット型のコンサル契約へ誘導する。
- これにより、安定収益と高単価契約の両方を実現できる。
最終的な考察
船井総研のビジネスモデルは、単なるコンサルティングサービスではなく、**顧客との関係性を軸にした「事業継続型の戦略」**と言える。
この考え方は、コンサル業界だけでなく、あらゆる業界の経営者にとって参考になるものだ。
経営者にとって重要なのは、**「どのように自社のサービスを提供し続け、顧客との関係を深められるか」**という視点を持つことだ。
船井総研のようなモデルを参考にしながら、自社に合ったストック型収益の仕組みを導入することが、持続的な成長につながる鍵となるだろう。