組織はリーダーの器以上に大きくならないという事例
先日、経営者や次世代のリーダーが集まる会であるテーマの活発な意見交換が交わされた。
ポイント
『組織はリーダーの器以上に大きくならない』
『あの人はリーダーの器ではない』
という言葉はよく耳にする。
そもそもこの器とはいったい何であるのか?どのように器を広げていけばいいのか?
器とは、器量とも書く様に、人の度量やこころの広さを示すもの。
小手先の技術やテクニックといったものとは違い、人間性や人間力のこと。
具体的には誠実さや約束を破らない等、その人の本来の資質や人柄を示すもの。
器を広げることは、リーダーシップと同じで、後天的に身につけることはできる。
広げるには、価値観の異なる世界に身を置くこと、その意見を調整する役割を担うこと」等々、多くの意見で盛り上がった。
リーダーは謙虚さを持ち、器の形を整えるが重要
私の脳裏に浮かんでいたのは、不思議なことに言葉ではなく「器の形」そのものであった。
上が広く、下にいくにつれ狭まっている形。
丁度パラボラアンテナの様に、はるか遠くの微量の電波を受け止めるのに好都合な形、それだけがくっきりと見えていたのである。
この「器の形」そのものをイメージしていた時に、ある経営者から教えられた言葉が蘇ってきた。
それはアサヒビールの樋口廣太郎元社長(滋賀県ご出身)の「琵琶湖の様に考える」というものだ。
低い(謙虚で素直な)ところに水や情報(人財)が集まる。
自らを低くすることで多くの川(出会い)からの流入(情報)は自然と増える。
と同時に、流出は瀬田川一本に絞られている様に、蓄えた経営資源は焦点を定めて活用することが大切という教えだ。
リーダーの器とは?器が大きいリーダーとは誰か?
日々の仕事や生活の中で、「リーダーの器とは?」ということを自問していると、逆の視点が見えてきた。
それは、「器が大きいリーダーは誰か?」というものだった。
お世話になっている多くの経営者の顔が浮かぶと共に、歴史上の英雄達が身近に迫ってきた。
その中でも中国古典の劉邦(貧しい身分ながらも、始皇帝の築いた統一国家秦を打ち破り、項羽との戦いにも屈しなかった、前漢の初代皇帝)だ。
久しぶりに「項羽と劉邦」を読み返す中で、“背水の陣”の故事で知られ軍事上の天才と言われた韓信をも虜にした劉邦の一つひとつのエピソードが染み入るように入ってきた。
特に、韓信をして「私(韓信)は確かに多くの兵を統率(兵に将たり)はできても、百戦錬磨のリーダーをまとめるリーダー(将に将たり)ではない。
それができるのはあなた(劉邦)だけ」と言わしめた懐の深さの大切さを実感したのである。
引っ張る姿勢(革新)と押し上げる姿勢(許容)のバランスを持つリーダー
リーダーには自らが新しいものに挑戦し、判断力と行動力を磨き常に革新を生み出していく「引っ張る姿勢」は不可欠だ。
しかし、項羽はその判断や行動の的確さや速さを過信し傲慢になり失敗した。
ここから学べる様に、組織の発展と共に信頼感を土台にリーダーは「押し上げる姿勢」が強く求められる。
劉邦が苦境の時にこそ行った、周りの諫言(かんげん)を聞き入れ(受容する)、違う価値観を前向きに受け止め、その相違点を許し良さを用いる(許容する)ことは大切だ。
リーダーの器とは何であるかを見続ける中で、引っ張る姿勢(革新)と押し上げる姿勢(許容)のバランスであるという感覚がこころに広がってきた。
今後とも、器(コップ)が逆さまになっていないか常に確認をし、人の想いや心情を受け止める度量を磨いていく決意を新たにした素晴らしい取り組みであった。
(器を広げるためには、周りの人の意見に耳を傾け、特に相手のペースに合わせ待つことを実践)
あなたご自身は何を感じ、何に取り組んでおられますか?
器が大きいリーダーである、あなたへの言葉
- 「組織はリーダーの器以上に大きくならない」
- 「琵琶湖の様に考える」
- 「兵に将たり⇔将に将たり」
- 「引っ張る姿リーダー(革新)と押し上げるリーダー(許容)のバランス」
- 「周りの人の意見に耳を傾け、特に相手のペースに合わせ待つ」
- 組織はリーダーの器以上にならない、あなたにとって器とは何を表すものでしょうか? あなたは器を広げるために、どの様な取り組みをされておられますか?
(2020年9月15日リライト)