どうして早く言ってくれないんだ 水臭いじゃないか!
父が創業した今の会社に入る前、大手の広告代理店で仕事をしていました。
経験不足の中「どうせやるなら!」と、ただただがむしゃらに働いていたのを想い出します。
日々の繰り返しの中で、徐々に自分なりの仕事観(仕事とは何か)や組織観(チームでは何が大切か)がおぼろげながら定まりつつありました。
「仕事は自分独りで、最低限何とかしないといけない!チームでは自分なりに解決してから周りの人に伝えるのが大切」等々。
今から想うと、きまじめで、ともすれば仕事を抱え込んでしまう傾向があった様です。
この様な状況の時、転機が訪れました。きっかけは、人間的な魅力を強く感じていた取引先や仲間の一言です。
「なんで早く言ってくれないのか 水臭いじゃないか!」と。
誰もが多忙を極める専門家集団の職場の中で、問題を抱え孤軍奮闘していた私。
その姿をじっと見守っていてくれた温かなまなざしがあった上での一言に感極まったのです。
この一言から、
「真剣に取り組んでいると、自分を支え、力になってくれる人が必ずいる」
「自分一人では、所詮何もできない。たかがしれている。組織パワーが大切だ!」
といった想いがふつふつと湧き上がって来たのです。
まさに、人やチームに対する信頼感、人が会社を動かしている実感が、ゆるぎない感覚として私のこころに根付いた瞬間だったのです。
経営トップになった今、「共存共栄の精神」を根幹に置いた舵取りをさらに進めていく上で
「人や組織の力を引き出し、組織力をより強固なものとする」
この経験が大変生きていると感じています。
「人や組織の力を引き出す」ために、
- 原点は相互信頼
- 周りを信じ意思疎通することが大切
であると実感する素晴らしいご体験談であった。
いつも背中見られているぞ!
人生と事業が大きく動く前の状況
経営のバトンタッチを受ける前、先代を見ていて強く感じていたことがあります。 それは、創業者だけがもつ重みです。
「特有のオーラーをかもし出し、その場の雰囲気を一瞬で変える。この原点には何があるのだろうか」と。
先代をよく観察する中から、私なりに当時いくつか見えてきました。
1)一人ひとりの人間を実に大切にしている
2)事業に取り組む覚悟(苦労や失敗をくぐり抜けた上で、この事業を推進するのだという凄み)
経営者・リーダーとして、こころにしみたあの言葉
この様な時、先代から言われたのが、「社員が見ていない様で一番見ているのは、トップの背中だ」という言葉です。
それまで自分は「創業者と同じような重みや凄みを出せないまでも、知らず知らずの内にどうしたら近づけるのか」と考えていたのは事実でした。
しかし、「年齢や経験、深みも違う後継者でも、己の背中をさらに意識し、自分の行動をまず正すことで道が開ける」と、私が取り組む日々の具体策について、一つの光明を見い出したのは、この先代の重みのある一言だったのです。
人生・事業で何がシフト(転換)したか
常に見られている自分を意識する中で、大きく転換したのは
「わが社には優秀な社員がいる」
「一人ひとりの社員に、自分は成長させてもらっているのだ」
という強く湧き上がる実感でした。
そこから、謙虚に>「お陰で助かったよ」という様に
社員一人ひとりに対する声掛けが自然と増えてきました。
当時を振り返るとそれが結果的に、社員との納得形成や信頼関係構築につながった様に感じています。
この時から、自分視点だけでなく相手視点(部下視点やお客様視点)で見る意識が、深まり、人生観・事業観に大きな転機となったのは間違いないところです。
「社員の納得感や信頼感」を得るために、
- 耐えざる率先垂範
- 一人ひとりへの気配り・心配り・声配り(声掛け)
であることを実感する素晴らしいご体験談であった。
(2020年2月4日リライト)