こんな出来事が!
この4月には終了していたはずのものが終わらず、1年間延長された。しかも、去年に引き続き再度の延長となり、2013年3月末まで継続されるという。
この再延長されたもの──それは2009年12月4日から施行された中小企業金融円滑化法、通称モラトリアム法のことだ。
当初は、2011年の3月までの約1年間限定という時限立法で成立した。推進したのは元金融・郵政改革大臣であった亀井静香氏。中小企業が借り入れている元金や金利の支払い猶予を金融機関に課したものである。もちろんこれはあくまでも一時的なものであり、与えられた猶予期間に金融機関が経営改善を各企業に促し、財務体質の早期健全化を図って、急激な倒産増による社会的な不安や混乱を防ぐ意味合いがあった様に想う。
私の想い
同法により中小企業だけでなく、金融機関も恩恵を受けている側面もある。通常金融機関は、融資先の企業の状況(①正常先②要注意先③破綻懸念先④実質破綻先⑤破綻先)によって、お金(貸し倒れ引当金)を別途積み立てしなくてはならない。当然破綻に近い状況の場合、引き当て金が多額になり、金融機関の財務内容を圧迫していた。しかし同法により破綻に近い企業でも一時的に救済され正常先に近い扱いとなり、負担が減る。
また、同法適用中に企業が倒産し貸し倒れが発生しても、金融機関としては60%負担で済み、残りの40%は国が負担してくれるという点だ。
が、見逃してはならないのは、このつけは我々一人ひとり(国民)にまわってくるということだろう。これは、金融機関と実行した企業だけの問題ではない。
事実これまでに、この法に基づく貸付条件の変更等の中小企業への実行件数は約228万件、63兆円を超すという。(金融庁平成24年1月発表資料より)この膨大な値を目の当たりにして、皆さんはどの様な印象をもたれるだろうか。来年春に同法を打ち切ることを踏まえ、国としても再生の受け皿となる投資基金を設立する検討に入るというが、根本的な解決への道のりは遠いように感じる。
日々への影響
国家の財政赤字の先送りに歯止めを掛けるために、消費税を上げる上げないの論議、天下り機関や人材の削減、公務員新規採用の56%カット等々、我々のお金を取り巻く状況は日々刻々と変化を遂げている。
こういった時代の中で私は、有名なジョン・F・ケネディのあの言葉がこころに沁(し)みるのだ。
“国家が我々一人ひとりの国民に何をしてくれるかを考えるのではなく、私たち一人ひとりの国民が、国家に何ができるか、を考えよう(Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.)”
生活・志(仕)事の中での実践
今回、金融庁の同法延長の発表を受け感じたことは、猶予することが大切なのではなく、自立する(改善する・決める)ことを支援する取り組みこそが大切であるのではないかということである。具体的には経営改善計画や、今後の方針書作成支援になるのかもしれない。しかし、絵に描いた餅になり易く、かつ、“仏作って魂入れず”の状態になってしまい、本気度が伝わってこない場合も少なくない。何とかなる、誰かが助けてくれる、では真の解決に至らないだろう。
その推進のエネルギーは、自らの「何とかする!」という強い意志の力であり、決心する、覚悟をもつということが原点になるということは間違いがない。
これは今回のテーマとなっている資金繰りや業績にあえいでいる企業と、それをサポートする立場にある金融機関のことだけを指している訳ではない。
経済的な自立を先延ばしにして、誰かに頼り、家族や組織(企業、社会、国家)に依存して生きている側面がないか─自身を含め周りを見渡してみる。自らの意思をもって立ち向かっていこうとしているか、自分から動き出しているか、常に振り返ることが大切だと今回改めて実感したのである。
あなたご自身は何を感じ、何に取り組んでおられますか?
毎日の言葉
- 「あくまでも一時的なもの」
- 「つけは我々一人ひとり(国民)にまわってくる」
- 「猶予することが大切なのではなく、自立する(改善する・決める)ことを支援する」
- 「仏作って魂入れず」
- 「推進のエネルギーは自らの「何とかする!」という強い意志の力」
- お金に関することで、先延ばししていることは何かないでしょうか?
- “経済的な自立”と“経済的な依存”、この言葉を聴いてあなたは何を想い浮かべられますか?
参考:金融庁HPより http://www.fsa.go.jp/news/23/ginkou/20120120-4.html
(2019年7月18日リライト)