社長の身近でもっとお手伝いがしたい!
入社してわずか1年半でバトンタッチ
家内の父でもあり、私に目をかけてくれた先代社長。
その慕っていた先代が、私が入社してわずか1年半で亡くなったのです。
不治の病であることは知らされていましたが、
「こんなに短い期間でバトンタッチとは・・・」
自分の心構えが、いかに甘かったのかを思いしらされました。
右も左もまだわからない私が、思いもかけない状況下でカリスマ社長の後を託されたリーダーとして経営の世界に踏み出す状況になったのです。
もちろん「いつかは自分が!」という覚悟で臨んでいましたが、他業界から来たということもあり不安だらけのスタートでした。
資金のやり繰りや、人材や職人の離職、組織の動揺等、乗り越えなければいけない課題が次々と迫ってきました。
当時を振り返ると、決断の遅れや判断ミスから窮地に追い込まれる様な場面も経験しました。
何とか先代に報いたい、支えてくれたお客様や社員、職人さん、そして家族・親戚への恩返しを少しでもしたいという一心で歩み続けていた私でした。
経営者・リーダーとして、こころにしみたあの言葉
そのような私が、大きな転機を迎えたのは、ある幹部の一言でした。
「社長の身近でもっとお手伝いがしたい!現場のまとめ役だけでなく、経営面でお役にたてれば!」と、若くして活躍していたある支店長が私に話してくれました。
こちらからもち掛けた話とはいえ、予想をはるかに上回る熱い想いで応えてくれる姿にただただ感動したのです。
(その後、総務課長として活躍中。全社(経営)的に大きな貢献をしてくれています)
経営者として期待されているんだと認識
振り返ると、この言葉と出会うまでの私は、ある面自分自身を認めていなかったのかもしれません。
ただただ黙々と努力してきただけで「リーダーとしてまだまだダメだ!」と自分の全てを否定し続けていた節がありました。
それが、この支店長の一言で、「経営者として、期待されているんだ。それに応えなければ」という想いが広がったのです。
この出来事が原点となり、「CS(お施主様・工務店様の満足)と、ES(社員満足・職人さん満足)の両立! 共に繁栄しよう!」という社風が育まれ、「繁栄のスパイラル(うず)」を力強く進める企業へと一歩進化したのです。
人が「やる気」をもち続けるために、
- 自分自身や周りに対するこころの底から「認める」
- 支えてくれる周りの人への「感謝・恩返し」
- 腹をわった対話(コミュニケーション)を実行すること
が大切であると、実感する素晴らしいご体験談でありました。
社長の方針がどうしても腹に落ちない!
社長が本当に実現したいことは何ですか?
経営者として会社の方針を明確にし、幹部・社員をはじめ関係者に一年の想いを浸透させる方針発表会。
私どもの会社でも毎年開催し、十年目を超えた時にある転機を実感する出来事がありました。
社長である私の方針に対して、それまでは別の角度から意見具申をする人間が少なかった、いやほとんど無かった感じでした。
そのような社風の中、この年はある幹部が事前の幹部会議の席上で
「社長の方針がどうしても腹(腑ではなく)に落ちない」
「いいのだけど、心に響かない」
「社長が本当に実現したいことは何ですか」
と心情を吐露し始めたのです。
そして、その幹部の意見を聞いているうちに、私自身、発表した方針の概要に熟慮不足を感じ、話し方にも熱が入っていないことに気がついたのです。
その幹部の言葉は、他の幹部も感じている総意であり、なにより私自身がうすうす感じていた物足りなさを、ズバリと言い当てたのです。
と同時に、最初虚をつかれ驚きはしたものの、その意見をじっくりと聴くと共に、本音・本気・本心での意見具申(提案)に対して当の幹部に感謝の意を自然と伝えていたのには自分でも驚きました。
なんでも言い合える風土が確実に育っている
ところが、その場に同席していた当時お世話になっていたある専門家からは、
「社長の方針に会議の席で異を唱えるような社員は感心しない。」
という思ってもみないアドバイス(もちろん、自分自身としてはその専門家の意見も判らなくはないが、今は状況が違うことはわかっていました)。
後日、ある尊敬する経営者にその話をすると、
「いい社員がいるなぁ! 大事にしろよ!」
という励ましをもらったのです。
まさに我が意を得たりと感じると共に、何でも言い合える風土を創って来たその芽が確実に育って来ていることに言いようのない喜びを感じたのです。
そして、その会議の後、一ヶ月の間に真剣に考え、悩み、見直し、また自己啓発の機会も得て、改めて幹部会議で自分の実現したいことを話したところ、
その幹部社員が「腹に落ちました!」と言ってくれ、本当によかったと実感しました。
リーダーがいつもベストであるとは限らない
組織のリーダーである経営者は、自分の意見に賛同をしてくれると安心するのかもしれません。
しかし、そこには長いものには巻かれろといった迎合や、事なかれ主義・前例主義がはびこる原因を作ってしまっていると強くく感じたのです。
異を唱える幹部がいるからこそ、多方面からのリスクや環境変化にも、柔軟に対応できるのではないでしょうか。
社長が憲法(決まり)ではなく、“繁栄”こそが憲法であるという真意を汲んで活躍してくれる幹部に、改めて感謝を伝えたい。
意見具申(提案)が多い会社にするために、
- 経営者がどのような意見をも受け止める度量と柔軟性を磨く
- 評価する前に意見提案にありがとうを伝える
- リーダーがいつもベストであるとは限らないことを伝えておくこと
が大切であると、実感する素晴らしいご体験談でありました。
(2020年2月20日リライト)